原文
君我由久 道乃奈我弖乎 久里多々祢 也伎保呂煩散牟 安米能火毛我母
作者
狭野弟上娘子(さののおとがみをとめ)
よみ
君が行く、道の長手(ながて)を、繰(く)り畳(たた)ね、焼き滅ぼさむ、天(あめ)の火もがも

意味
あなたが行く長い道のりを、手繰り寄せ、焼き滅ぼしてくれる天の火があったらよいのに。
補足
中臣朝臣宅守(なかとみのあそんやかもり)と狭野弟上娘子(さののおとがみをとめ)との贈答歌のひとつです。
万葉集巻十五の目録には、「中臣朝臣宅守(なかとみのあそんやかもり)が、蔵部(くらべ)の女嬬(じょじゅ:女官)である狭野弟上娘子(さののおとがみをとめ)をお嫁さんにしたとき、流罪(るざい)となって、越前国(現在の福井県)に流されました。このとき、夫婦が別れ別れになってもう逢えないことを嘆いて、二人がそれぞれの悲しみの心を表して、贈り答える歌」とあります。