原文
千鳥鳴 佐保乃河瀬之 小浪 止時毛無 吾戀者
作者
大伴郎女(おおとものいらつめ)
よみ
千鳥(ちどり)鳴く 佐保の川瀬(かはせ)の さざれ波 やむ時もなし 我(あ)が恋(こ)ふらくは
意味
千鳥(ちどり)が鳴く佐保の川瀬(かはせ)のさざ波のように止む時がありません。私が恋しく思う気持ちは。
・この歌は、歌題詞に「京職(きょうしき:都の行政機関)藤原大夫(ふじわらのまえつきみ)、大伴郎女(おおとものいらつめ)に贈る歌三首 [卿、諱(いみな)を麻呂(まろ)という也]」とある0522~0524番歌に対して、「大伴郎女(おおとものいらつめ)の和(こた)ふる歌四首(0525~0528番歌)」のうちの一つです。
補足
0528番歌の左注には「右 郎女(いらつめ)は佐保大納言卿(さほのだいなごんまえつきみ:大伴安麻呂のこと)の女(娘)なり。 初め一品(いっぽん)穂積皇子(ほずみのみこ)に嫁ぎ、寵(うつくしび)を被ふること儔(たぐい)無し(格別に愛された)。しかくして皇子薨(こう)ぜし後の時 藤原麻呂大夫(ふじわらのまろまえつきみ)、郎女(いらつめ)を娉(つまど)う。 郎女(いらつめ)、坂上の里に家す。 仍(よ)りて族氏(やから)号(なづ)けて坂上郎女(さかのうえのいらつめ)というなり。」とあります。