原文
千鳥鳴 三吉野川之 川音 止時梨二 所思公
作者
車持千年(くるまもちのちとせ)
よみ
千鳥(ちどり)泣く、み吉野川の、川音(かわおと)の、やむ時なしに、思ほゆる君
意味
千鳥(ちどり)が鳴く吉野川の川音が止むことがないように、やむ時もなく(いつまでも)思われる君。
補足
この歌の題詞には、「車持朝臣千年(くるまもちのあそんちとせ)が作る歌一首[并(あわ)せて短歌])或(ある)本の反歌(はんか)に曰(いわ)く。」とあります。この歌は、「或(ある)本の反歌(はんか)に曰(いわ)く」と示されている歌(二首あります)のひとつです。
この歌の次の歌(あかねさす日並べなくに我が恋は吉野の川の霧に立ちつつ)の左注には、「右は年月がはっきりとしていません。 但し、歌が似ているのでこの順に載せます。或(ある)本は、養老七年(西暦723年)五月に(元正天皇が)芳野離宮(よしののとつみや)に行幸された時の作と云います。」とあります。