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君之行 氣長久成奴 山多豆乃 迎乎将徃 待尓者不待
衣通王(そとほしのおほきみ)
君が行き、日(け)長くなりぬ、山たづの、迎へを行かむ、待つには待たじ
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あなたがいらっしゃってから、ずいぶんと日が過ぎてしまいました。山たづのように、あなたを迎えに行きましょう、待ってなんかいられないわ。
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秋山之 樹下隠 逝水乃 吾許曽益目 御念従者
鏡王女(かがみのおおきみ)
秋山の、木(こ)の下隠(がく)り、行く水の、我(わ)れこそ益さめ、御(み)思ひよりは
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秋山の木陰を流れて行く水のように静かに、わたくしのほうこそ、あなたさまのことをもっともっと思っていますわ。
107
足日木乃 山之四付二 妹待跡 吾立所沾 山之四附二
大津皇子(おおつのみこ)
あしひきの、山のしづくに、妹(いも)待つと、我れ立ち濡れぬ、山のしづくに
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山であなたを待っていると、立ち濡れてしまいましたよ、山のしづくで。
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宇都曽見乃 人尓有吾哉 従明日者 二上山乎 弟世登吾将見
大伯皇女(おおくのひめみこ)
うつそみの、人にある我れや、明日よりは、二上山(ふたかみやま)を、弟背(いろせ)と我が見む
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この世に生きている私は、明日からは二上山(ふたかみやま)を弟だと思って見るのでしょうか・・・・・