原文
射目立而 跡見乃岳邊之 瞿麦花 總手折 吾者将去 寧樂人之為
作者
紀鹿人(きのかひと): 紀女郎(きのいらつめ)のお父様。
よみ
射目(いめ)立てて、跡見(あとみ)の岡辺(をかへ)の、なでしこの、花ふさ手折(たを)り、我れは持ちて行く、奈良人(ならひと)のため
意味
跡見(あとみ)の岡辺のなでしこを束ごと手折って持っていきましょう、奈良の人のために。
「射目(いめ)立てて」は、跡見(あとみ)を導く枕詞(まくらことば)です。
補足
この歌の題詞には「典鑄正(てんちゅうのかみ/いものしのかみ)紀朝臣鹿人(きのあそんかひと)が衛門大尉(えもんのだいじょう)大伴宿祢稲公(おおとものすくねいなぎみ)の跡見庄(とみのしょう)に至って作る歌一首」ととあります。
「跡見(あとみ)」がどこかは、はっきりしてませんが、現在の奈良県桜井市外山(とび)あたりと考えられています。
「典鑄正(てんちゅうのかみ/いものしのかみ)」は、金属・ガラス器などの製造をする部署の長官です。