原文 Original Text

佐奴良久波 多麻乃緒婆可里 古布良久波 布自能多可祢乃 奈流佐波能其登

作者 Author

不明 Unknown

よみ Reading

さ寝(ぬ)らくは 玉の緒(を)ばかり 恋(こ)ふらくは 富士(ふじ)の高嶺(たかね)の 鳴沢(なるさわ)のごと

- Sanuraku ha Tama no wo bakari Kofuraku ha Fuji no takane no Narusawa no goto.

意味 Meaning

富士山 by H.Satoさま

寝たのはわずかの間だけ。恋しい気持ちは富士(ふじ)の高嶺(たかね)の鳴沢(なるさは)のように激しく鳴り響いているのです。

・「鳴沢(なるさは)」は、現在の富士山の西斜面にある大規模な崩壊地である大沢(大沢崩れとも呼ばれています)と考えられています。ここを源とする大沢川は駿河湾にまで流れ込んでいます。

- rough meaning: The time I slept with her was very short. But my heart, longing for her, is rumbling like the Narusawa on the high peaks of Mount Fuji.

補足 Notes

富士山 by 写真AC

・この歌には「或本の歌に曰はく」および「一本の歌に曰はく」と注記された次の二つの歌が載っています。

或本の歌に曰はく: ま愛(かな)しみ 寝らくはしけらく さ鳴らくは 伊豆の高嶺(たかね)の 鳴沢(なるさわ)なすよ

[意味] いとおしく思って共寝したのはわずかばかりなのに、噂は伊豆の高嶺の鳴沢のように響き渡っています。

一本の歌に曰はく: 逢へらくは 玉の緒(を)しけや 恋(こ)ふらくは 富士(ふじ)の高嶺に 降る雪(ゆき)なすも

[意味] 逢ったのはほんのわずかです。恋想うことは富士(ふじ)の高嶺に 降る雪(ゆき)のように止むことがありません。。

更新日: 2025年01月01日(水)