原文
能登河乃 後者相牟 之麻之久母 別等伊倍婆 可奈之久母在香
作者
治部卿船王(じぶのきょうふなのおおきみ)
よみ
能登川(のとがわ)の、後には逢はむ、しましくも、別るといへば、悲しくもあるか
意味
また後にお逢いできるでしょうが、少しの間でも、お別れとなると悲しいものですね。
「能登川(のとがわ)の」で「後に」を導いています。
補足
この歌の題詞には、「27日、林王(はやしのおおおきみ)の宅(いえ)で、但馬按察使(たじまのあぜち)橘奈良麻呂朝臣(たちばなのならまろあそん)に餞(せん)する宴(うたげ)の歌三首」、とあります。この歌はその内のひとつです。つまり、林王の邸宅で催された橘奈良麻呂の送別会のときに詠まれた歌ということですね。
橘奈良麻呂は、天平勝宝4年(西暦752年)に但馬因幡(たじまのいなば:現在の鳥取県)按察使(あぜち:地方行政を監督する役人)に任命されました。