原文
大船乃 宇倍尓之居婆 安麻久毛乃 多度伎毛思良受 歌乞和我世
作者
不明
よみ
大船(おほぶね)の、上にし居れば、天雲(あまくも)の、たどきも知らず、歌ひこそ我が背(せ)
意味
大船の上にいるので、天雲(あまくも)のように(心もとなく)どうしようもないので、歌でも詠んでください、あなた。
「天雲(あまくも)の」は、「たどき(手がかり/手段などの意味)」を導く枕詞(まくらことば)です。
補足
・この歌を含む3890番歌の題詞には、「天平二年庚午(かのえうま)(西暦730年)冬十一月、大宰帥(だざいのそち:大宰府の長官のこと)大伴卿(おおともきょう)が大納言(だいなごん)に任ぜられ[帥を兼ねること舊(もと)の如し]、京(みやこ)に上る時に、傔従(けんじゅう:従者のこと)等は別に海路を取り京に入ることになる。 ここに羇旅(たび)を悲傷し、各(おのおの)所心(おもい)を陳(の)べて作る歌十首」とあります。