原文
木綿疊 手向乃山乎 今日越而 何野邊尓 廬将為吾等
作者
大伴坂上郎女(おおとものさかのうえのいらつめ)
よみ
木綿畳(ゆふたたみ)、手向(たむ)けの山を、今日越えて、いづれの野辺に、廬(いほ)りせむ我れ
意味
手向(たむ)けの山(この歌では、逢坂山)を今日越えて、どこの野辺で仮寝をするでしょうか、私は。
木綿畳(ゆふたたみ)は、手向けを導く枕詞(まくらことば)です。木綿畳(ゆふたたみ)は、木綿(ゆふ)を畳んだもののことです。木綿(ゆふ)は、楮(こうぞ)の樹皮から作った白い布で、神様をお祭りするときに使われます。
補足
この歌の題詞には、「(天平9年(西暦737年))夏四月、大伴坂上郎女(おおとものさかのうえのいらつめ)、賀茂神社(かものやしろ:京都の賀茂神社)を拝(おろが)み奉る時、便(すなは)ち(そのまま)相坂山を超え、近江の海を望み見て、晩頭(ひのくれ:夕方)に還(かえ)り来る時に作る歌一首」とあります。