第十六巻 : さ丹つらふ君がみ言と玉梓の

2009年10月18日(日)更新


原文: 左耳通良布 君之三言等 玉梓乃 使毛不来者 憶病 吾身一曽 千磐破 神尓毛莫負 卜部座 龜毛莫焼曽 戀之久尓 痛吾身曽 伊知白苦 身尓染登保里 村肝乃 心砕而 将死命 尓波可尓成奴 今更 君可吾乎喚 足千根乃 母之御事歟 百不足 八十乃衢尓 夕占尓毛 卜尓毛曽問 應死吾之故

作者: 車持娘子(くるまもちのおとめ)

よみ: さ丹(に)つらふ君がみ言と、玉梓(たまづさ)の使(つかひ)も来ねば、思ひ病む我が身ひとつぞ、
ちはやぶる神にもな負(お)ほせ、占部(うらべ)据(す)ゑ、亀(かめ)もな焼きそ、
恋ひしくに、痛き我が身ぞ、いちしろく、身にしみ通り、むらきもの心砕けて死なむ命、にはかになりぬ、
今さらに君か我を呼ぶ、たらちねの母のみ言か、百(もも)足らず八十(やそ)の衢(ちまた)に、夕占(ゆふけ)にも占(うら)にもぞ問ふ、
死ぬべき我がゆゑ

意味: 美しいあなたからのお言葉です、と伝えてくれる使いの方も来ないので、一人思い悩んでいる私です。
神様のせいにはしないでください。占い師を呼んで亀(かめ)の甲羅を焼いて占ったりしないでくださいな。
恋しくて恋しくて、苦しくて苦しくて、身も心も。もう心が砕けそうで、死んでしまいそうです。

今更、あなたが私のことを呼んでくださるでしょうか。それとも母が街角で占ってくれるのでしょうか。
もう死んでしまったほうがいい私なのに。。。。。


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