原文
栲領巾乃 懸巻欲寸 妹名乎 此勢能山尓 懸者奈何将有 [一云 可倍波伊香尓安良牟]
作者
丹比笠麻呂(たじひのかさまろ)
よみ
栲領巾(たくひれ)の 懸(か)けまく欲しき 妹(いも)が名を この背の山に 懸(か)けばいかにあらむ [一に云はく 替へばいかにあらむ]
意味
白い栲(たく)の領巾(ひれ)を懸けるように口にして呼びたいと思う妹(いも:妻のこと)の名を、この背の山に懸けて付けて妹の山としてはどうでしょう[妹の山に取り替えたらどうでしょう]。
・「背の山」は現在の和歌山県かつらぎ町にある背山(せのやま)とされています。
- rough meaning: How about changing the name of this Mt.Seno(it means Mt.Husband) to Mt.Imo(it means Mt.Wife), the name of my wife I want to call out aloud?
補足
・この歌の題詞には「丹比真人笠麻呂(たじひのまひとかさまろ)、紀伊國(きのくに:現在の和歌山県)に徃(ゆ)き、勢能山(せのやま)を超(こ)ゆる時に作る歌一首」とあります。
- This poem was sung when the author(Tajihi-no-Kasamaro) went to Kii-no-Kuni (now Wakayama Prefecture) and crossed Mt.Seno.