原文
久堅之 天原従 生来 神之命 奥山乃 賢木之枝尓 白香付 木綿取付而 齊戸乎 忌穿居 竹玉乎 繁尓貫垂 十六自物 膝折伏 手弱女之 押日取懸 如此谷裳 吾者祈奈牟 君尓不相可聞
作者
よみ
ひさかたの 天の原より 生(あ)れ来(きた)る 神の命 奥山の賢木(さかき)の枝に しらか付け 木綿(ゆふ)取り付けて 斎瓮(いはひへ)を 斎(いは)ひ掘り据(す)ゑ 竹玉(たかたま)を 繁(しじ)に貫(ぬ)き垂(た)れ 獣(しし)じもの 膝(ひざ)折り伏して たわや女(め)の 襲(おす)取り懸け かくだにも 我れは祈(こ)ひなむ 君に逢はじかも
意味
天の原からおいでになる神さまに、山の榊(さかき)の枝に白香(しらか)や木綿(ゆふ)を取り付けて、瓶を供えて、竹玉(たかたま)を紐に通して、鹿(しか)や猪のようにひざを曲げて、かよわい女の衣を着て、せめてこうゆう風にでも私はお祈りいたします。あなたに会えるかも知れないので。
・天平5年(西暦733年)の冬11月に、大伴氏の神を奉る時に詠んだ歌です。
- rough meaning: Oh, Gods born from the heavens. I am praying by putting white fiber taken from mulberry on the branches of Sakaki in the mountains, wearing Uchikake(a garment with a long trailing skirt), setting up the sacred turtle in the digged soil, threading a string through a bamboo tube ball, bending my knees like a deer or a wild boar. I pray to Gods in this way, because I may be able to meet you.
補足
・この歌の題詞に「大伴坂上郎女(おおとものさかのうえのいらつめ)、神を祭(まつ)る歌一首 [并(あわ)せて短歌]」とあります。