原文
知波夜布留 賀美乃美佐賀尓 奴佐麻都<里> 伊波<布>伊能知波 意毛知々我多米
作者
神人部子忍男(かむとべのこおしお)
防人(さきもり)として派遣される
よみ
ちはやぶる 神の御坂(みさか)に 幣(ぬさ)奉(まつ)り 斎(いは)ふ命(いのち)は 母父(おもちち)がため
意味
神の御坂に幣(ぬさ)を奉(まつ)ってこの命の無事を祈るのは母と父のためなのです。
・「ちはやぶる」は神を導く枕詞(まくらことば)です。
・「神の御坂」は現在の長野県と岐阜県の境にある神坂峠(かみさかとうげ)だと考えられています。
・「幣(ぬさ)」は神への捧げ物として紙や絹などの布を細かくしたものを使っていたようです。
- rough meaning: It is for my mother and father that I pray for the safety of my life by offering Nusa(finely crushed paper or silk cloth as a tribute to Japanese God) on Misaka(deity's mountain pass).
- He(writer of this poem) was ordered to be dispatched to Kyushu as a sakimori. He wrote this poem while he was traveling to Kyushu, leaving his mother and father in his hometown. .
補足
・この歌を含む4321番歌の題詞には、「天平勝寳七歳(西暦755年)二月、相替(あいかわ)りて筑紫に遣わされる諸國の防人(さきもり)たちの歌」とあります。
・この歌の左注には、「右一首 主帳(しゅちょう:郡の書記官)埴科郡(はにしなのこおり:現在の長野県の一部) 神人部子忍男(かむとべのこおしお)」とあります。