原文
左由理婆奈 由里毛安波牟等 於毛倍許曽 伊末能麻左可母 宇流波之美須礼
作者
よみ
さ百合花、ゆりも逢(あ)はむと、思へこそ、今のまさかも、うるはしみすれ
意味
百合(ゆり)の花というように、また後(ゆり:のち)にもお会いしたいと思うからこそ、今この時も、誠実に親しくするのですよ。
・越中(えっちゅう)の秦伊美吉石竹(はたのいみきいはたけ)の館で行われた宴会の席で、石竹(いはたけ)が大伴家持たちに、百合で作った髪飾りを三つ贈りました。このときに大伴家持が百合の髪飾りをつけてみて詠んだ歌です。
・「後(ゆり)」とは、「後で、将来に」という意味です。
- rough meaning: I hope to see you again later, so I am close to you sincerely now at this banquet.(In ancient Japanese, "later" was pronounced "yuri" and "yuri" also meant "lily". )
補足
この歌の題詞には「同月(天平感寶元年五月:西暦749年)九日、諸僚(しょりょう:役人らを指す)少目(しょうさかん:役職のひとつ)秦伊美吉石竹(はたのいみきいはたけ)の舘に會(あ)ひて飲宴す。ここに主人(あるじ)白合の花縵(はなかづら)三枚を造り、豆器(とうき:食器の一種)に疊(かさ)ね置き賓客(ひんきゃく)に捧(ささ)げ贈る。各(おのおの)この縵を賦(ふ)して作る三首」とあります。また、この歌の左注には「右一首守大伴宿祢家持」とあります。