大伴家持(おおとものやかもち) Otomo-no-Yakamochi
大伴家持(おおとものやかもち)は万葉集の成立に深くかかわっていたのですが、編纂者(へんさんしゃ)かどうかははっきりとはしていません。大伴家持(おおとものやかもち)について詳しくお知りになりたい方は水垣さまの波流能由伎(はるのゆき)をご参照ください。
- Otomo-no-Yakamochi was the governor and is especially famous for his many poems in Manyoshu. He was deeply involved in the formation of Manyoshu, but it is not clear if he was an editor of Manyoshu.
[生没] 養老2年(西暦718年)あたり~ 延暦4年(西暦785年)
[家族] 父 : 大伴旅人(おおとものたびと)、子 : 永主(ながぬし)
母 : 不明です。
奥さんは、大伴坂上大嬢(おおとものさかのうえのおおいらつめ)です。
[略歴]
- 天平18年(746): 7月7日 国守として越中(えっちゅう: いまの富山県)に赴任(ふにん)。
- 勝宝3年(751): 少納言に任じられ: 都(みやこ)に戻る。
- 宝字2年(758): 6月16日 因幡守(いなばのかみ)に左遷される。
- 宝字3年(759): 元旦 因幡国庁で万葉集の最後の歌を詠む。
- 宝字6年(762): 信部大輔(しんぶのだいふ)に任じられ: 都(みやこ)に戻る。
- 宝字8年(764): 1月12日薩摩守(さつまのかみ)に任じられる。
- 神護1年(765): 都(みやこ)に戻る。
- 景雲1年(767): 大宰少弐(だざいのしょうに)に任じられ: 太宰府(だざいふ)に赴任(ふにん)する。
- 宝亀1年(770): 民部少輔(みんぶのしょうふ)に任じられ: 都(みやこ)に戻る。
- 延暦2年(783): 7月19日 中納言(ちゅうなごん)に任じられる。
- 延暦3年(784): 持節征東将軍(じせつせいとうしょうぐん: )に任じられる。
- 延暦4年(785): 亡くなる。
持節征東将軍(じせつせいとうしょうぐん)は蝦夷(えぞ)征討(せいとう)の将軍のことです。坂上田村麻呂がなったことで有名ですよね。「持節(じせつ)」は、天皇から刀を与えられて、天皇の権限を代行することをいいます。
大伴家持(おおとものやかもち)が詠んだ歌 Poems by Otomo-no-Yakamochi
0403: 朝に日に見まく欲りするその玉をいかにせばかも手ゆ離れずあらむ
0408: なでしこがその花にもが朝な朝な手に取り持ちて恋ひぬ日なけむ
0414: あしひきの岩根こごしみ菅の根を引かばかたみと標のみぞ結ふ
0462: 今よりは秋風寒く吹きなむをいかにかひとり長き夜を寝む
0463: 長き夜をひとりや寝むと君が言へば過ぎにし人の思ほゆらくに
0464: 秋さらば見つつ偲へと妹が植ゑしやどのなでしこ咲きにけるかも
0465: うつせみの世は常なしと知るものを秋風寒み偲ひつるかも
0466: 我がやどに花ぞ咲きたるそを見れど.......(長歌)
0467: 時はしもいつもあらむを心痛くい行く我妹かみどり子を置きて
0468: 出でて行く道知らませばあらかじめ妹を留めむ関も置かましを
0469: 妹が見しやどに花咲き時は経ぬ我が泣く涙いまだ干なくに
0470: かくのみにありけるものを妹も我れも千年のごとく頼みたりけり
0471: 家離りいます我妹を留めかね山隠しつれ心どもなし
0472: 世間し常かくのみとかつ知れど痛き心は忍びかねつも
0474: 昔こそ外にも見しか我妹子が奥つ城と思へばはしき佐保山
0477: あしひきの山さへ光り咲く花の散りぬるごとき我が大君かも
0478: かけまくもあやに畏し我が大君皇子の命のもののふの.......(長歌)
0691: ももしきの大宮人は多かれど心に乗りて思ほゆる妹
大伴宿祢家持(おおとものすくねやかかもち)、娘子(をとめ)に贈る歌七首
0714: 心には思ひわたれどよしをなみ外のみにして嘆きぞ我がする
0715: 千鳥鳴く佐保の川門の清き瀬を馬うち渡しいつか通はむ
0716: 夜昼とい別き知らず我が恋ふる心はけだし夢に見えきや
0717: つれもなくあるらむ人を片思に我れは思へばわびしくもあるか
0718: 思はぬに妹が笑ひを夢に見て心のうちに燃えつつぞ居る
0719: ますらをと思へる我れをかくばかりみつれにみつれ片思をせむ
0720: むらきもの心砕けてかくばかり我が恋ふらくを知らずかあるらむ
0727: 忘れ草我が下紐に付けたれど醜の醜草言にしありけり
0728: 人もなき国もあらぬか我妹子とたづさはり行きて副ひて居らむ
0732: 今しはし名の惜しけくも我れはなし妹によりては千たび立つとも
0733: うつせみの世やも二行く何すとか妹に逢はずて我がひとり寝む
0734: 我が思ひかくてあらずは玉にもがまことも妹が手に巻かれなむ
0743: 我が恋は千引の石を七ばかり首に懸けむも神のまにまに
0744: 夕さらば屋戸開け設けて我れ待たむ夢に相見に来むといふ人を
0745: 朝夕に見む時さへや我妹子が見れど見ぬごとなほ恋しけむ
0765: 一重山へなれるものを月夜よみ門に出で立ち妹か待つらむ
0766: 道遠み来じとは知れるものからにしかぞ待つらむ君が目を欲り
0767: 都路を遠みか妹がこのころはうけひて寝れど夢に見え来ぬ
0768: 今知らす久迩の都に妹に逢はず久しくなりぬ行きて早見な
0769: ひさかたの雨の降る日をただ独り山辺に居ればいぶせかりけり
0770: 人目多み逢はなくのみぞ心さへ妹を忘れて我が思はなくに
0771: 偽りも似つきてぞするうつしくもまこと我妹子我れに恋ひめや
0772: 夢にだに見えむと我れはほどけども相し思はねばうべ見えずあらむ
0773: 言とはぬ木すらあじさゐ諸弟らが練りのむらとにあざむかえけり
0774: 百千たび恋ふと言ふとも諸弟らが練りのことばは我れは頼まじ
0777: 我妹子がやどの籬を見に行かばけだし門より帰してむかも
0778: うつたへに籬の姿見まく欲り行かむと言へや君を見にこそ
0779: 板葺の黒木の屋根は山近し明日の日取りて持ちて参ゐ来む
0780: 黒木取り草も刈りつつ仕へめどいそしきわけとほめむともあらず
0781: ぬばたまの昨夜は帰しつ今夜さへ我れを帰すな道の長手を
0788: うら若み花咲きかたき梅を植ゑて人の言繁み思ひぞ我がする
0790: 春風の音にし出なばありさりて今ならずとも君がまにまに
0994: 振り放けて三日月見れば一目見し人の眉引き思ほゆるかも
1037: 今造る久迩の都は山川のさやけき見ればうべ知らすらし
1040: ひさかたの雨は降りしけ思ふ子がやどに今夜は明かして行かむ
1446: 春の野にあさる雉の妻恋ひにおのがあたりを人に知れつつ
1462: 我が君に戯奴は恋ふらし賜りたる茅花を食めどいや痩せに痩す
1464: 春霞たなびく山のへなれれば妹に逢はずて月ぞ経にける
1477: 卯の花もいまだ咲かねば霍公鳥佐保の山辺に来鳴き響もす
1478: 我が宿の花橘のいつしかも玉に貫くべくその実なりなむ
1489: 我が宿の花橘は散り過ぎて玉に貫くべく実になりにけり
1490: 霍公鳥待てど来鳴かず菖蒲草玉に貫く日をいまだ遠みか
1491: 卯の花の過ぎば惜しみか霍公鳥雨間も置かずこゆ鳴き渡る
1494: 夏山の木末の茂に霍公鳥鳴き響むなる声の遥けさ
1510: なでしこは咲きて散りぬと人は言へど我が標めし野の花にあらめやも
1554: 大君の御笠の山の黄葉は今日の時雨に散りか過ぎなむ
1567: 雲隠り鳴くなる雁の行きて居む秋田の穂立繁くし思ほゆ
1567: 雨隠り心いぶせみ出で見れば春日の山は色づきにけり
1569: 雨晴れて清く照りたるこの月夜またさらにして雲なたなびき
1591: 黄葉の過ぎまく惜しみ思ふどち遊ぶ今夜は明けずもあらぬか
1597: 秋の野に咲ける秋萩秋風に靡ける上に秋の露置けり(天平15年8月)
1598: さを鹿の朝立つ野辺の秋萩に玉と見るまで置ける白露
1602: 山彦の相響むまで妻恋ひに鹿鳴く山辺に独りのみして
1603: このころの朝明に聞けばあしひきの山呼び響めさを鹿鳴くも
1628: 我が宿の萩の下葉は秋風もいまだ吹かねばかくぞもみてる
1640: 我が岡に盛りに咲ける梅の花残れる雪をまがへつるかも
1572: 我が宿の尾花が上の白露を消たずて玉に貫くものにもが
1632: あしひきの山辺に居りて秋風の日に異に吹けば妹をしぞ思ふ
1663: 沫雪の庭に降り敷き寒き夜を手枕まかずひとりかも寝む
3900: 織女し舟乗りすらしまそ鏡清き月夜に雲立ちわたる
3913: 霍公鳥楝の枝に行きて居ば花は散らむな玉と見るまで
3919: あをによし奈良の都は古りぬれどもと霍公鳥鳴かずあらなくに
3921: かきつばた衣に摺り付け大夫の着襲ひ猟する月は来にけり
3954: 馬並めていざ打ち行かな渋谿の清き礒廻に寄する波見に
3959: かからむとかねて知りせば越の海の荒礒の波も見せましものを
3960: 庭に降る雪は千重敷くしかのみに思ひて君を我が待たなくに
3963: 世間は数なきものか春花の散りのまがひに死ぬべき思へば
3969: 大君の任けのまにまにしなざかる.......(長歌)
3965: 春の花今は盛りににほふらむ折りてかざさむ手力もがも
3966: 鴬の鳴き散らすらむ春の花いつしか君と手折りかざさむ
3970: あしひきの山桜花一目だに君とし見てば我れ恋ひめやも
3971: 山吹の茂み飛び潜く鴬の声を聞くらむ君は羨しも
3978: 妹も我れも心は同じたぐへれどいやなつかしく相見れば.......(長歌)
3982: 春花のうつろふまでに相見ねば月日数みつつ妹待つらむぞ
3986: 渋谿の崎の荒礒に寄する波いやしくしくにいにしへ思ほゆ
3991: もののふの八十伴の男の思ふどち心遣らむと.......(長歌)
4000: 天離る鄙に名懸かす越の中国内ことごと.......(長歌)
4001: 立山に降り置ける雪を常夏に見れども飽かず神からならし
4002: 片貝の川の瀬清く行く水の絶ゆることなくあり通ひ見む
4024: 立山の雪し消らしも延槻の川の渡り瀬鐙漬かすも
4043: 明日の日の布勢の浦廻の藤波にけだし来鳴かず散らしてむかも
4044: 浜辺より我が打ち行かば海辺より迎へも来ぬか海人の釣舟
4077: 我が背子が古き垣内の桜花いまだ含めり一目見に来ね
4091: 卯の花のともにし鳴けば霍公鳥いやめづらしも名告り鳴くなへ
4094: 葦原の瑞穂の国を天下り知らしめしける.......(長歌)
4106: 大汝少彦名の神代より言ひ継ぎけらく父母を見れば貴く妻子見れば.......(長歌)
4113: 大君の遠の朝廷と任きたまふ官のまに.......(長歌)
4115: さ百合花ゆりも逢はむと下延ふる心しなくは今日も経めやも
4120: 見まく欲り思ひしなへにかづらかけかぐはし君を相見つるかも
4122: 天皇の敷きます国の天の下四方の道には.......(長歌)
4123: この見ゆる雲ほびこりてとの曇り雨も降らぬか心足らひに
4136: あしひきの山の木末のほよ取りてかざしつらくは千年寿くとぞ
4137: 正月立つ春の初めにかくしつつ相し笑みてば時じけめやも
4140: 吾が園の李の花か庭に散るはだれのいまだ残りたるかも
4144: 燕来る時になりぬと雁がねは国偲ひつつ雲隠り鳴く
4148: 杉の野にさ躍る雉いちしろく音にしも泣かむ隠り妻かも
4149: あしひきの八つ峰の雉鳴き響む朝明の霞見れば悲しも
4150: 朝床に聞けば遥けし射水川朝漕ぎしつつ唄ふ舟人
4151: 今日のためと思ひて標しあしひきの峰の上の桜かく咲きにけり
4159: 礒の上のつままを見れば根を延へて年深からし神さびにけり
4166: 時ごとにいやめづらしく八千種に草木花咲き.......(長歌)
4167: 時ごとにいやめづらしく咲く花を折りも折らずも見らくしよしも
4168: 毎年に来鳴くものゆゑ霍公鳥聞けば偲はく逢はぬ日を多み
4174: 春のうちの楽しき終は梅の花手折り招きつつ遊ぶにあるべし
4180: 春過ぎて夏来向へばあしひきの山呼び響め .......(長歌)
4185: うつせみは恋を繁みと春まけて思ひ繁けば.......(長歌)
4188: 藤波の花の盛りにかくしこそ浦漕ぎ廻つつ年に偲はめ
4191: 鵜川立ち取らさむ鮎のしがはたは我れにかき向け思ひし思はば
4193: 霍公鳥鳴く羽触れにも散りにけり盛り過ぐらし藤波の花
4194: 霍公鳥鳴き渡りぬと告ぐれども我れ聞き継がず花は過ぎつつ
4199: 藤波の影なす海の底清み沈く石をも玉とぞ我が見る
4205: 皇祖の遠御代御代はい重き折り酒飲みきといふぞこのほほがしは
4217: 卯の花を腐す長雨の始水に寄る木屑なす寄らむ子もがも
4218: 鮪突くと海人の灯せる漁り火の秀にか出ださむ我が下思ひを
4223: あをによし奈良人見むと我が背子が標けむ黄葉地に落ちめやも
4225: あしひきの山の黄葉にしづくあひて散らむ山道を君が越えまく
4226: この雪の消残る時にいざ行かな山橘の実の照るも見む
4229: 新しき年の初めはいや年に雪踏み平し常かくにもが
4234: 鳴く鶏はいやしき鳴けど降る雪の千重に積めこそ我が立ちかてね
4238: 君が行きもし久にあらば梅柳誰れとともにか我がかづらかむ
4239: 二上の峰の上の茂に隠りにしその霍公鳥待てど来鳴かず
4249: 石瀬野に秋萩しのぎ馬並めて初鷹猟だにせずや別れむ
4250: しなざかる越に五年住み住みて立ち別れまく惜しき宵かも
4253: 立ちて居て待てど待ちかね出でて来し君にここに逢ひかざしつる萩
4255: 秋の花種にあれど色ごとに見し明らむる今日の貴さ
4259: 十月時雨の常か我が背子が宿の黄葉散りぬべく見ゆ
4278: あしひきの山下ひかげかづらける上にやさらに梅をしのはむ
4285: 大宮の内にも外にもめづらしく降れる大雪な踏みそね惜し
4286: 御園生の竹の林に鴬はしば鳴きにしを雪は降りつつ
4287: 鴬の鳴きし垣内ににほへりし梅この雪にうつろふらむか
4290: 春の野に霞たなびきうら悲しこの夕影に鴬鳴くも
4291: 我が宿のい笹群竹吹く風の音のかそけきこの夕かも
4292: うらうらに照れる春日にひばり上がり心悲しも独し思へば
4303: 我が背子が宿の山吹咲きてあらばやまず通はむいや年の端に
4304: 山吹の花の盛りにかくのごと君を見まくは千年にもがも
4305: 木の暗の茂き峰の上を霍公鳥鳴きて越ゆなり今し来らしも
4306: 初秋風涼しき夕解かむとぞ紐は結びし妹に逢はむため
4307: 秋と言へば心ぞ痛きうたて異に花になそへて見まく欲りかも
4308: 初尾花花に見むとし天の川へなりにけらし年の緒長く
4309: 秋風に靡く川辺のにこ草のにこよかにしも思ほゆるかも
4311: 秋風に今か今かと紐解きてうら待ち居るに月かたぶきぬ
4312: 秋草に置く白露の飽かずのみ相見るものを月をし待たむ
4314: 八千種に草木を植ゑて時ごとに咲かむ花をし見つつ偲はな
4316: 高圓の宮の裾廻の野づかさに今咲けるらむをみなへしはも
4334: 海原を遠く渡りて年経とも子らが結べる紐解くなゆめ
4399: 海原に霞たなびき鶴が音の悲しき宵は国辺し思ほゆ
4501: 八千種の花は移ろふ常盤なる松のさ枝を我れは結ばな
4395: 龍田山見つつ越え来し桜花散りか過ぎなむ我が帰るとに
4410: み空行く雲も使と人は言へど家づと遣らむたづき知らずも
4434: ひばり上がる春へとさやになりぬれば都も見えず霞たなびく
4435: ふふめりし花の初めに来し我れや散りなむ後に都へ行かむ
4443: ひさかたの雨は降りしくなでしこがいや初花に恋しき我が背
4450: 我が背子が宿のなでしこ散らめやもいや初花に咲きは増すとも
4451: うるはしみ我が思ふ君はなでしこが花になそへて見れど飽かぬかも
4453: 秋風の吹き扱き敷ける花の庭清き月夜に見れど飽かぬかも
4471: 消残りの雪にあへ照るあしひきの山橘をつとに摘み来な
4481: あしひきの八つ峰の椿つらつらに見とも飽かめや植ゑてける君
4484: 咲く花は移ろふ時ありあしひきの山菅の根し長くはありけり
4490: あらたまの年行き返り春立たばまづ我が宿に鴬は鳴け
4492: 月数めばいまだ冬なりしかすがに霞たなびく春立ちぬとか
4493: 初春の初子の今日の玉箒手に取るからに揺らく玉の緒
4503: 君が家の池の白波礒に寄せしばしば見とも飽かむ君かも
4515: 秋風の末吹き靡く萩の花ともにかざさず相か別れむ
4516: 新しき年の初めの初春の今日降る雪のいやしけ吉事
随時追加しています。 (^ ^*