原文
世間波 加受奈枳物能可 春花乃 知里能麻我比尓 思奴倍吉於母倍婆
作者
よみ
世間(よのなか)は、数(かず)なきものか、春花(はるはな)の、散りのまがひに、死ぬべき思へば
意味
この世は、はかないものなのでしょうか。春の花が散り乱れている時に死んでしまうのかと思うと。
補足
天平19年(西暦747年)2月20日に詠まれた歌です。
この歌を含む3962番歌~3964番歌の題詞には、「忽(たちまち)に枉疾(わうしつ:たちの悪い病気のこと)に沈み、殆(ほとほ)と泉路(せんろ:あの世への道)に臨(のぞ)む、仍(よ)りて歌詞を作り、以って悲緒(ひしょ:悲しみ)を申(の)ぶる一首[并(なら)びに短歌]」とあります。
また、左注には、「右、天平十九年(西暦年)春二月廿日(20日)、越中國守(こしのみちのなかのくにのかみ)の舘(むつろみ:館)に病(やまい)に臥(ふ)し、悲傷(かなし)び、聊(いささか:少しばかり)に此の歌を作る」とあります。