原文
庭尓敷流 雪波知敝之久 思加乃未尓 於母比■伎美乎 安我麻多奈久尓
作者
よみ
庭に降る、雪(ゆき)は千重(ちへ)敷(し)く、しかのみに、思ひて君を、我(あ)が待たなくに
意味
庭に降る、雪(ゆき)は幾重にも幾重にも積もっていますが、私はこんな程度に思ってあなたを待ったのではありませんよ。(もっともっと深く思っているのです)
補足
この歌の題詞には「相(あい)歡(よろこ)ぶ歌二首」とあります。
この歌の注には、「天平18年(西暦746年8月)、大伴宿祢池主(おおとものすくねいけぬし)が大帳使(たいちょうし)として都に赴いた。同年11月に越中に還(かえ)った。そこで、詩酒の宴を設けて、弾絲飲樂(だんしいんらく:楽器を演奏したり飲み楽しむ)した。この日に白雪が忽(にわか)に降り、地に一尺あまり積もった。この時、漁夫の船が海に入り、波に浮かんでいた。そこで大伴家持(おおとものやかもち)が、雪(ゆき)、波二つの眺めに心を寄せて詠んだ。」とあります。