原文
余能奈可波 牟奈之伎母乃等 志流等伎子 伊与余麻須万須 加奈之可利家理
作者
よみ
世間(よのなか)は 空(むな)しきものと 知る時し いよよますます 悲しかりけり
意味
世の中は空しいものといいますが、このような悲しい知らせをうけて、さらに深い悲しみに暮れていくのです。
・この時、都で妹坂上郎女の夫である大伴宿奈麻呂(おおとものすくなまろ)が亡くなったとの知らせを受けたのですが、この知らせを受ける2か月ほど前には奥様を亡くしていたのです。
- rough meaning: It is said that our world is incomplete, but when I receive such sad news, I am saddened deeper.
補足
この歌の題詞には、「大宰帥(だざいのそち)大伴卿(おおともきょう)凶問(きょうもん:亡くなったことの知らせ)に報(こた)ふる歌一首 禍故重疊(かこちょうじょう:不幸が重なること)し 凶問(きょうもん)累集(るいしゅう)す 永く崩心(ほうしん:心が壊れること)の悲みを懐(むだ)き 獨(ひと)り断腸(だんちょう)の泣(なみだ)を流す 但(ただ)し兩君(りょうくん)の大助(だいじょ:ひとかたならぬ助け)に依りて傾ける命を纔(わずか)に継ぐのみ [筆の言を盡(つく)さぬは 古の今に歎(なげ)く所なり(筆で書き尽くせないのは昔も今も嘆くところです)]」とあります。
この歌の左注には、「神龜(じんき/しんき)五年(西暦728年)六月二十三日」とあります。