原文
樂浪之 思賀乃辛碕 雖幸有 大宮人之 船麻知兼津
作者
よみ
楽浪(ささなみ)の、志賀(しが)の辛崎(からさき)、幸(さき)くあれど、大宮人(おほみやひと)の、舟待ちかねつ
意味
志賀(しが)の辛崎(からさき)は、幸の名のように平穏ですが、大宮人の舟が来るのを待っていても(来ないのです)。
・「楽浪(ささなみ)の」は、志賀(しが)、大津などを導く枕詞(まくらことば)です。楽浪(ささなみ)は琵琶湖の西南岸地域を示し、志賀(しが)は現在の滋賀県大津市の北部一帯とされています。
・この歌で「大宮人」は、(近江の)大津宮(おおつのみや)があった頃の官人のことを指しています。
補足
この歌は題詞に「近江(おうみ)の荒れたる都を過ぐる時に、柿本朝臣人麻呂(かきのもとのあそんひとまろ)の作る歌」とある0029番歌の反歌です。