柿本人麻呂 by イラストAC

第一巻は雑歌(ぞうか)として天皇の時代ごとに歌が整理されています。また、額田王(ぬかたのおおきみ)柿本人麻呂(かきのもとのひとまろ)などの有名な歌が沢山あります。

・雑歌(ぞうか)は、色々な宮廷儀礼・行幸(ぎょうこう)・饗宴などで詠まれた歌です。

- The first volume is organized as "Zouka"(miscellaneous poems) for era of each emperor. There are many poems of famous poets such as Nukata-no-Ookimi and Kakinomoto-no-hitomaro.

[note] "Zouka" are poems composed at various court ceremonies, imperial visits, and banquets.

雑歌(ぞうか) Zouka(miscellaneous poems)

香久山 by きょう

泊瀬朝倉宮御宇天皇代 [大泊瀬稚武天皇]
はつせあさくらのみや

0001: 籠もよみ籠持ち掘串もよみ堀串持ち.......(長歌)

高市岡本宮御宇天皇代 [息長足日廣額天皇]

0002: 大和には群山あれどとりよろふ天の香具山.......(長歌)

0003: やすみししわご大君の朝には取り撫でたまひ.......(長歌)

0004: たまきはる宇智の大野に馬並めて朝踏ますらむその草深野

0005: 霞立つ長き春日の暮れにけるわづきも知らず.......(長歌)

0006: 山越しの風を時じみ寝る夜おちず家なる妹を懸けて偲ひつ

明日香川原宮御宇天皇代 [天豊財重日足姫天皇]

0007: 秋の野のみ草刈り葺き宿れりし宇治の宮処の仮廬し思ほゆ

後岡本宮御宇天皇代 [天豊財重日足姫天皇位後即位後岡本宮]

0008: 熟田津に船乗りせむと月待てば潮もかなひぬ今は漕ぎ出でな

0009: 莫囂円隣之大相七兄爪謁気我が背子がい立たせりけむ厳橿が本

0010: 君が代も我が代も知るや岩代の岡の草根をいざ結びてな

0011: 我が背子は仮廬作らす草なくは小松が下の草を刈らさね

0012: 我が欲りし野島は見せつ底深き阿胡根の浦の玉ぞ拾はぬ

0013: 香具山は畝火雄々しと耳成と相争ひき.......(長歌)

0014: 香具山と耳成山と闘ひし時立ちて見に来し印南国原

0015: 海神の豊旗雲に入日さし今夜の月夜さやけくありこそ

近江大津宮御宇天皇代 [天命開別天皇謚曰天智天皇]

0016: 冬ごもり春さり來れば鳴かざりし鳥も.......(長歌)

0017: 味酒三輪の山あをによし奈良の山の山の際に.......(長歌)

0018: 三輪山をしかも隠すか雲だにも心あらなも隠さふべしや

0019: 綜麻形の林のさきのさ野榛の衣に付くなす目につく吾が背

0020: あかねさす紫野行き標野行き野守は見ずや君が袖振る

0021: 紫のにほへる妹を憎くあらば人妻故に我れ恋ひめやも

明日香清御原宮天皇代 [天渟中原瀛真人天皇謚曰天武天皇]

0022: 河上のゆつ岩群に草生さず常にもがもな常処女にて

0023: 打ち麻を麻続の王海人なれや伊良虞の島の玉藻刈ります

0024: うつせみの命を惜しみ波に濡れ伊良虞の島の玉藻刈り食む

0025: み吉野の耳我の嶺に時なくぞ雪は降りける間無くぞ.......(長歌)

0026: み吉野の耳我の山に時じくぞ雪は降るといふ間なくぞ.......(長歌)

0027: 淑き人のよしとよく見てよしと言ひし吉野よく見よ良き人よく見

藤原宮御宇天皇代[高天原廣野姫天皇 元年丁亥十一年譲位軽太子 <尊>号曰太上天皇]

0028: 春過ぎて夏来るらし白妙の衣干したり天の香具山

0029: 玉たすき畝傍の山の橿原のひじりの御代ゆ生れましし.......(長歌)

0030: 楽浪の志賀の辛崎幸くあれど大宮人の舟待ちかねつ

0031: 楽浪の志賀の大わだ淀むとも昔の人にまたも逢はめやも

0032: 古の人に我れあれや楽浪の古き都を見れば悲しき

0033: 楽浪の国つ御神のうらさびて荒れたる都見れば悲しも

0034: 白波の浜松が枝の手向けぐさ幾代までにか年の経ぬらむ

0035: これやこの大和にしては我が恋ふる紀路にありといふ名に負ふ背の山

0036: やすみしし我が大君のきこしめす天の下に国はしも.......(長歌)

吉野川 by 写真AC

0037: 見れど飽かぬ吉野の川の常滑の絶ゆることなくまたかへり見む

0038: やすみしし我が大君神ながら神さびせすと吉野川.......(長歌)

0039: 山川も依りて仕ふる神ながらたぎつ河内に舟出せすかも

0040: 嗚呼見の浦に舟乗りすらむをとめらが玉裳の裾に潮満つらむか

0041: 釧着く答志の崎に今日もかも大宮人の玉藻刈るらむ

0042: 潮騒に伊良虞の島辺漕ぐ舟に妹乗るらむか荒き島廻を

0043: 我が背子はいづく行くらむ沖つ藻の名張の山を今日か越ゆらむ

0044: 我妹子をいざ見の山を高みかも大和の見えぬ国遠みかも

0045: やすみしし我が大君高照らす日の皇子神ながら.......(長歌)

0046: 安騎の野に宿る旅人うち靡き寐も寝らめやもいにしへ思ふに

0047: ま草刈る荒野にはあれど黄葉の過ぎにし君が形見とぞ来し

0048: 東の野にかぎろひの立つ見えてかへり見すれば月かたぶきぬ

0049: 日並の皇子の命の馬並めてみ狩り立たしし時は来向ふ

0050: やすみしし我が大君高照らす日の皇子.......(長歌)

0051: 采女の袖吹きかへす明日香風都を遠みいたづらに吹く

0052: やすみしし我ご大君高照らす日の皇子荒栲の藤原が上に.......(長歌)

0053: 藤原の大宮仕へ生れ付くや娘子がともは羨しきろかも

0054: 巨勢山のつらつら椿つらつらに見つつ偲はな巨勢の春野を

0055: あさもよし紀人羨しも真土山行き来と見らむ紀人羨しも

0056: 川上のつらつら椿つらつらに見れども飽かず巨勢の春野は

0057: 引間野ににほふ榛原入り乱れ衣にほはせ旅のしるしに

0058: いづくにか船泊てすらむ安礼の崎漕ぎ廻み行きし棚無し小舟

0059: 流らふる妻吹く風の寒き夜に我が背の君はひとりか寝らむ

0060: 宵に逢ひて朝面無み名張にか日長く妹が廬りせりけむ

0061: 大丈夫のさつ矢手挟み立ち向ひ射る圓方は見るにさやけし

0062: 在り嶺よし対馬の渡り海中に幣取り向けて早帰り来ね

0063: いざ子ども早く日本へ大伴の御津の浜松待ち恋ひぬらむ

0064: 葦辺行く鴨の羽交ひに霜降りて寒き夕は大和し思ほゆ

0065: 霰打つ安良礼松原住吉の弟日娘女と見れど飽かぬかも

0066: 大伴の高師の浜の松が根を枕き寝れど家し偲はゆ

0067: 旅にしてもの恋ほしきに鶴が音も聞こえずありせば恋ひて死なまし

0068: 大伴の御津の浜なる忘れ貝家なる妹を忘れて思へや

0069: 草枕旅行く君と知らませば岸の埴生ににほはさましを

0070: 大和には鳴きてか来らむ呼子鳥象の中山呼びぞ越ゆなる

0071: 大和恋ひ寐の寝らえぬに心なくこの洲崎廻に鶴鳴くべしや

0072: 玉藻刈る沖へは漕がじ敷栲の枕のあたり忘れかねつも

0073: 我妹子を早見浜風大和なる我を松椿吹かざるなゆめ

浜の松 by 写真AC

0074: み吉野の山のあらしの寒けくにはたや今夜も我が独り寝む

0075: 宇治間山朝風寒し旅にして衣貸すべき妹もあらなくに

0076: ますらをの鞆の音すなり物部の大臣盾立つらしも

0077: 吾が大君ものな思ほし皇神の継ぎて賜へる我なけなくに

0078: 飛ぶ鳥の明日香の里を置きて去なば君があたりは見えずかもあらむ

0079: 大君の命畏み柔びにし家を置きこもりくの泊瀬の川に.......(長歌)

0080: あをによし奈良の家には万代に我れも通はむ忘ると思ふな

0081: 山辺の御井を見がてり神風の伊勢娘子どもあひ見つるかも

0082: うらさぶる心さまねしひさかたの天のしぐれの流らふ見れば

0083: 海の底沖つ白波龍田山いつか越えなむ妹があたり見む

0084: 秋さらば今も見るごと妻恋ひに鹿鳴かむ山ぞ高野原の上

更新日: 2024年01月14日(日)