第一巻 : やすみしし我ご大君高照らす日の皇子

2010年01月03日(日)更新


原文: 八隅知之 和期大王 高照 日之皇子 麁妙乃 藤井我原尓 大御門 始賜而 埴安乃 堤上尓 在立之 見之賜者 日本乃 青香具山者 日經乃 大御門尓 春山跡 之美佐備立有 畝火乃 此美豆山者 日緯能 大御門尓 弥豆山跡 山佐備伊座 耳為之 青菅山者 背友乃 大御門尓 宣名倍 神佐備立有 名細 吉野乃山者 影友乃 大御門従 雲居尓曽 遠久有家留 高知也 天之御蔭 天知也 日之御影乃 水許曽婆 常尓有米 御井之清水

作者: 不明

よみ: やすみしし、我(わ)ご大君(おほきみ)、高(たか)照(て)らす、日の皇子(みこ)、荒栲(あらたへ)の、藤井(ふぢゐ)が原(はら)に、大御門(おほみかど)、始めたまひて、埴安(はにやす)の、堤(つつみ)の上に、あり立たし、見したまへば、大和(やまと)の、青香具山(あをかぐやま)は、日の経(たて)の、大御門(おほみかど)に、春山(はるやま)と、茂(し)みさび立てり、畝傍(うねび)の、この瑞山(みづやま)は、日の緯(よこ)の、大御門(おほみかど)に、瑞山(みづやま)と、山さびいます、耳成(みみなし)の、青菅山(あをすがやま)は、背面(そとも)の、大御門(おほみかど)に、よろしなへ、神さび立てり、名ぐはし、吉野の山は、かげともの、大御門(おほみかど)ゆ、雲居(くもゐ)にぞ、遠くありける、高(たか)知るや、天(あめ)の御蔭(みかげ)、天(あめ)知るや、日の御蔭(みかげ)の、水(みづ)こそば、とこしへにあらめ、御井(みゐ)のま清水(しみづ)

意味: 国を治められている大君(おおきみ)の日の皇子(みこ)が、藤井(ふぢゐ)が原(はら)に大御門(おほみかど)をお建て始めになり、埴安(はにやす)の堤(つつみ)の上にお立ちになってご覧になれば、大和の青々とした香具山(かぐやま)は東側の大御門(おほみかど)に、春山らしく茂って見えます。みずみずしい畝傍(うねび)の山は西側の大御門(おほみかど)に美しく見えます。青々とした耳成山(みみなしやま)は、北側の大御門(おほみかど)に神々しく見え、名高い吉野の山は、南側の大御門(おほみかど)を通じて遠くのの向こうにあります。
天に届くように高くそびえる宮殿のある、この地の水こそはいつまでもあってほしい、御井(みゐ)の清水(しみづ)よ。

畝傍山 撮影 by きょう

藤原宮(ふじはらのみや)の御井歌(みゐのうた)、と題された、藤原宮(ふじはらのみや)を称(たた)える歌です。


第一巻