原文
三吉野之 耳我嶺尓 時無曽 雪者落家留 間無曽 雨者零計類 其雪乃 時無如 其雨乃 間無如 隈毛不落 念乍叙来 其山道乎
作者
よみ
み吉野の 耳我(みみが)の嶺(みね)に 時なくぞ 雪は降りける 間(ま)無くぞ 雨は降りける その雪の 時なきがごと その雨の 間なきがごと 隈(くま)もおちず 思ひつつぞ来る その山道を
意味
吉野の耳我(みみが)の嶺(みね)に絶え間なく雪が降る。ひっきりなしに雨が降る。その雪の絶え間ないように、その雨の途絶えることがないように、道の角ごとに、ものを思いながら来たのです。その山道を。
「耳我(みみが)の嶺(みね)」がどこかはわかっていません。
天智10年(西暦671年)に吉野に下った時のことを思い出して詠んだ歌と考えられます。
補足
この歌の題詞には「天皇の御製歌(おほみうた: お作りになった歌)」とあります。