原文
指進乃 粟栖乃小野之 芽花 将落時尓之 行而手向六
作者
よみ
指進(さしずみ/さすすみ)の 栗栖(くるす)の小野の 萩(はぎ)の花 散らむ時にし 行きて手向(たむ)けむ
意味
栗栖の野に咲く萩の花が散る頃までには、出掛けて行って、手向けをしましょう。
- rough meaning: By the time the Hagi flowers blooming in the field of Kurusu(some area in Asuka) are scattered, I will go back home and offer them to shinto God.
「指進の」は栗栖を導く枕詞(まくらことば)と考えられています。また栗栖は飛鳥のどこか(未詳)とされています。
「手向(たむ)け」は神様に幣(みてぐら/ぬさ:布などを切って串に挟んだもの)などの物を供えることをいいます。
補足
この歌を含む0969番歌の題詞には、「(天平)三年(西暦731)辛未(かのとひつじ)、大納言大伴卿(おおともきょう)、寧樂(なら)の家に在りて故郷を思ふ歌二首」とあります。大伴旅人はこの年の7月25日に奈良で亡くなっているので、これらの二首の歌は、病に伏せているときに故郷の栗栖(くるす)を思って詠んだ歌と思われます。