原文

橘者 實左倍花左倍 其葉左倍 枝尓霜雖降 益常葉之樹

作者

聖武天皇(しょうむてんのう)

よみ

橘(たちばな)は、実さへ花さへ、その葉さへ、枝(え)に霜(しも)降れど、いや常葉(とこは)の木

橘 万葉植物園にて 撮影 by きょう

意味

橘(たちばな)は、実や花やその葉もすばらいものですが、枝に霜(しも)が降っても、ますます栄える常葉の木ですね。

この歌の題詞には、「天平8年(西暦736年)11月、左大辨(さだいべん)葛城王(かつらぎのおおきみ)らに橘氏(たちばなし)の姓を賜(たまわ)ったときに聖武天皇(しょうむてんのう)が詠まれた歌一首」とあります。

補足

この歌の左注には、「右の歌、冬11月9日、従三位葛城王、従四位上佐為王(さいのおおきみ)等、皇族の高名ある地位を辞して、外家之橘の姓を賜ることが終了しました。このとき、太上天皇(たいじょうてんのう: 元正天皇)、聖武天皇、皇后(光明皇后)が共に皇后宮においでになり、宴を催されて橘を祝う歌をお作りになり、併(あわ)せて橘宿祢(たちばなのすくね)らに御酒を賜りました。また、この歌は太上天皇の歌とも云われています。但し、聖武天皇と皇后の歌がそれぞれ一首あったとのことです。その歌は無くなっており、今探しても見つかりません。残っている書類を調べてみたところ、天平8年八年11月9日に葛城王(かつらぎのおおきみ)たちが橘宿祢(たちばなのすくね)の姓を申請し、17日に橘宿祢を賜わったとあります。」とあります。

更新日: 2013年09月01日(日)