橘(たちばな) Tachibana(Citrus tachibana)
ミカン科の常緑小高木です。橘(たちばな)は、ニッポンタチバナまたはミカンのこと、もしくはミカン類の総称と考えられています。
ニッポンタチバナは、日本産で、現在では愛知県以西でごくまれに見られるそうです。6月頃に小さくて白い花を咲かせ、冬に実をつけます。実はとてもすっぱいそうです。
古事記では、橘(たちばな)は非時香果(ときじくのみ)とされています。非時香果(ときじくのみ)とは、いつでも香りたかい果実、という意味です。この実には尊い生命力が宿ると信じられていたようです。
- Tachibana is an inedible(so sour) green citrus fruit native to Japan. Around June, small white flowers bloom and bear fruit in winter. The fruit was believed by ancient people that precious vitality dwells .
橘(たちばな)を詠んだ歌
橘(たちばな)を詠んだ歌は、万葉集には72首もあります。霍公鳥とセットの歌がたくさんあります。
0125: 橘の蔭踏む道の八衢に物をぞ思ふ妹に逢はずして
0179: 橘の嶋の宮には飽かぬかも佐田の岡辺に侍宿しに行く
0410: 橘を宿に植ゑ生ほし立ちて居て後に悔ゆとも験あらめやも
0411: 我妹子がやどの橘いと近く植ゑてし故にならずはやまじ
0423: つのさはふ磐余の道を朝さらず.......(長歌)
1009: 橘は実さへ花さへその葉さへ枝に霜降れどいや常葉の木
1027: 橘の本に道踏む八衢に物をぞ思ふ人に知らえず
1315: 橘の島にし居れば川遠みさらさず縫ひし我が下衣
1404: 鏡なす我が見し君を阿婆の野の花橘の玉に拾ひつ
1473: 橘の花散る里の霍公鳥片恋しつつ鳴く日しぞ多き
1478: 我が宿の花橘のいつしかも玉に貫くべくその実なりなむ
1481: 我が宿の花橘に霍公鳥今こそ鳴かめ友に逢へる時
1483: 我が背子が宿の橘花をよみ鳴く霍公鳥見にぞ我が来し
1486: 我が宿の花橘を霍公鳥来鳴かず地に散らしてむとか
1489: 我が宿の花橘は散り過ぎて玉に貫くべく実になりにけり
1492: 君が家の花橘はなりにけり花のある時に逢はましものを
1493: 我が宿の花橘を霍公鳥来鳴き響めて本に散らしつ
1502: 五月の花橘を君がため玉にこそ貫け散らまく惜しみ
1504: 暇なみ五月をすらに我妹子が花橘を見ずか過ぎなむ
1507: いかといかとある我が宿に百枝さし.......(長歌)
1508: 望ぐたち清き月夜に我妹子に見せむと思ひしやどの橘
1509: 妹が見て後も鳴かなむ霍公鳥花橘を地に散らしつ
1755: 鴬の卵の中に霍公鳥独り生れて己が父に.......(長歌)
1950: 霍公鳥花橘の枝に居て鳴き響もせば花は散りつつ
1954: 霍公鳥来居も鳴かぬか我がやどの花橘の地に落ちむ見む
1958: 橘の林を植ゑむ霍公鳥常に冬まで棲みわたるがね
1966: 風に散る花橘を袖に受けて君がみ跡と偲ひつるかも
1967: かぐはしき花橘を玉に貫き贈らむ妹はみつれてもあるか
1968: 霍公鳥来鳴き響もす橘の花散る庭を見む人や誰れ
1969: 我が宿の花橘は散りにけり悔しき時に逢へる君かも
1971: 雨間明けて国見もせむを故郷の花橘は散りにけむかも
1978: 橘の花散る里に通ひなば山霍公鳥響もさむかも
1980: 五月山花橘に霍公鳥隠らふ時に逢へる君かも
1987: 片縒りに糸をぞ我が縒る我が背子が花橘を貫かむと思ひて
1990: 我れこそば憎くもあらめ我がやどの花橘を見には来じとや
2251: 橘を守部の里の門田早稲刈る時過ぎぬ来じとすらしも
2489: 橘の本に我を立て下枝取りならむや君と問ひし子らはも
2750: 我妹子に逢はず久しもうましもの安倍橘の苔生すまでに
3239: 近江の海泊り八十あり八十島の島の崎々.......(長歌)
3307: しかれこそ年の八年を切り髪のよち子を過ぎ..........
3309: 物思はず道行く行くも青山をふりさけ見れば.......(長歌)
3496: 橘の古婆の放髪が思ふなむ心うつくしいで我れは行かな
3574: 小里なる花橘を引き攀ぢて折らむとすれどうら若みこそ
3779: 我が宿の花橘はいたづらに散りか過ぐらむ見る人なしに
3822: 橘の寺の長屋に我が率寝し童女放髪は髪上げつらむか
3823: 橘の照れる長屋に我が率ねし童女放髪に髪上げつらむか
3909: 橘は常花にもが霍公鳥住むと来鳴かば聞かぬ日なけむ
3912: 霍公鳥何の心ぞ橘の玉貫く月し来鳴き響むる
3916: 橘のにほへる香かも霍公鳥鳴く夜の雨にうつろひぬらむ
3918: 橘のにほへる園に霍公鳥鳴くと人告ぐ網ささましを
3920: 鶉鳴く古しと人は思へれど花橘のにほふこの宿
3984: 玉に貫く花橘をともしみしこの我が里に来鳴かずあるらし
3998: 我が宿の花橘を花ごめに玉にぞ我が貫く待たば苦しみ
4058: 橘のとをの橘八つ代にも我れは忘れじこの橘を
4059: 橘の下照る庭に殿建てて酒みづきいます我が大君かも
4060: 月待ちて家には行かむ我が插せる赤ら橘影に見えつつ
4063: 常世物この橘のいや照りにわご大君は今も見るごと
4064: 大君は常磐にまさむ橘の殿の橘ひた照りにして
4092: 霍公鳥いとねたけくは橘の花散る時に来鳴き響むる
4101: 珠洲の海人の沖つ御神にい渡りて.......(長歌)
4102: 白玉を包みて遣らばあやめぐさ花橘にあへも貫くがね
4111: かけまくもあやに畏し天皇の.......(長歌)
4112: 橘は花にも実にも見つれどもいや時じくになほし見が欲し
4166: 時ごとにいやめづらしく八千種に草木花咲き.......(長歌)
4169: 霍公鳥来鳴く五月に咲きにほふ.......(長歌)
4172: 霍公鳥来鳴き響めば草取らむ花橘を宿には植ゑずて
4180: 春過ぎて夏来向へばあしひきの.......(長歌)
4189: 天離る鄙としあればそこここも.......(長歌)
4207: ここにしてそがひに見ゆる我が背子が.......(長歌)
4266: あしひきの八つ峰の上の栂の木の.......(長歌)
4276: 島山に照れる橘うずに刺し仕へまつるは卿大夫たち
4341: 橘の美袁利の里に父を置きて道の長道は行きかてのかも
4371: 橘の下吹く風のかぐはしき筑波の山を恋ひずあらめかも