原文

多知波奈乃 之多布久可是乃 可具波志伎 都久波能夜麻乎 古比須安良米可毛

作者

占部廣方(うらべのひろかた)

よみ

橘(たちばな)の 下吹く風(かぜ)の かぐはしき 筑波の山を 恋ひずあらめかも

意味

 by 写真AC

橘(たちばな)の下を吹く風(かぜ)が香しい筑波の山を懐かしく思わずにいられましょうか。

・遠く離れた故郷を懐かしんで詠んだ防人(さきもり)の歌の一つです。

- rough meaning: I can't help but miss my Mt.Tsukuba where the wind blowing under Tachibana was fragrant.

- He(writer of this poem) had left his hometown as a Sakimori soldier.

補足

・この歌を含む4321番歌の題詞には、「天平勝寳七歳(西暦755年)二月、相替(あいかわ)りて筑紫に遣わされる諸國の防人(さきもり)たちの歌」とあります。

・天平勝宝7年(西暦755年)2月9日に、常陸國(ひたちのくに)の防人(さきもり)を引率する役人である防人部領使(さきもりことりづかい)として息長真人國嶋(おきながのまひとのくにしま)が進上したとされる17首の歌の一つです。このことは、4372番歌の左注に、「二月十四日、常陸國(ひたちのくに)の部領防人使(さきもりことりづかい)大目(だいさかん)正七位上息長真人國嶋(おきながのまひとくにしま)が進(たてまつ)る歌數十七首 但し、拙劣(せつれつ)の歌は取(とり)載(の)せず。」とあります。つたない歌は載せてもらえなかったのですね。

更新日: 2020年10月04日(日)