第十三巻 : あらたまの年は来ゆきて玉梓の

2007年02月04日(日)更新


原文: 荒玉之 年者来去而 玉梓之 使之不来者 霞立 長春日乎 天地丹 思足椅 帶乳根笶 母之養蚕之 眉隠 氣衝渡 吾戀 心中少 人丹言 物西不有者 松根 松事遠 天傳 日之闇者 白木綿之 吾衣袖裳 通手沾沼

作者: 不明

よみ: あらたまの、年は(き)来ゆきて、玉梓(たまづさ)の、使(つかひ)の来(こ)ねば、霞(かすみ)立つ、長き春日(はるひ)を、天地(あめつち)に、思ひ足(た)らはし、たらちねの、母が飼(か)ふ蚕(こ)の、繭(まよ)隠(こも)り、息(いき)づきわたり 我(あ)が恋(こ)ふる、心のうちを、人に言ふ、ものにしあらねば、松が根(ね)の 待つこと遠(とほ)み、天(あま)伝(つた)ふ、日の暮(く)れぬれば、白栲(しろたへ)の、我(わ)が衣手(ころもで)も、通(とほ)りて濡(ぬ)れぬ

意味: また新しい年がやってきても便りの使いがこないので、霞(かすみ)の立つ長い春の日に、空と地面がいっぱいになるほどにあなた様への想いをたたえて、母が飼っている蚕(かいこ)が繭(まゆ)にこもっているように息を詰まらせ、私が恋する気持ちを人に言ったりしてはいけないので、待ち遠しい気持ちで、天を渡る日が暮れてしまうと、私の衣の袖(そで)は涙で濡れてしまうのでした。

かいこ by 朝日村まゆの花の会さま

第十三巻