第三巻 : みもろの神なび山に五百枝さし

2008年06月01日(日)更新


原文: 三諸乃 神名備山尓 五百枝刺 繁生有 都賀乃樹乃 弥継嗣尓 玉葛 絶事無 在管裳 不止将通 明日香能 舊京師者 山高三 河登保志呂之 春日者 山四見容之 秋夜者 河四清之 旦雲二 多頭羽乱 夕霧丹 河津者驟 毎見 哭耳所泣 古思者

作者: 山部赤人(やまべのあかひと)

よみ: みもろの、神なび山に、五百枝(いほへ)さし、しじに生ひたる、栂(つが)の木の、いや継ぎ継ぎに、玉葛(たまかづら)、絶ゆることなく、ありつつも、やまず通はむ、明日香の、古き都は、山高み、川とほしろし、春の日は、山し見がほし、秋の夜は、川しさやけし、朝雲に、鶴(たづ)は乱れ、夕霧(ゆうぎり)に、かはづは騒く、見るごとに、音(ね)のみし泣かゆ、いにしへ思へば

意味: 神のいらっしゃいます神なび山に、たくさんの枝をつけ、生い茂っている栂(つが)の木のように、つぎつぎと絶えることなく、このようにずっと通っていきたいと思う明日香の古い都は、山は高く、川は雄大で、春は山がすてきで、秋の夜は川がさわやかで、朝雲に鶴が乱れ飛び、夕霧(ゆうぎり)にカエルが騒ぐ。見れば涙が流れます、昔を思い出して。

題詞には、「神岳(かみおか)に登って、山部赤人(やまべのあかひと)が詠んだ歌」とあります。この「神岳(かみおか)」は甘樫丘(あまかしのおか)と考えられます。

撮影(1999) by きょう

第三巻