原文
玉葛 實不成樹尓波 千磐破 神曽著常云 不成樹別尓
作者
大伴安麻呂(おおとものやすまろ)
よみ
玉葛(たまかづら) 実ならぬ木には ちはやぶる 神ぞつくといふ ならぬ木ごとに
- Tama-kazura Mi naranu ki niha Chihayaburu Kami zo tsuku to ifu Naranu ki goto ni.
意味
(玉葛(たまかづら)のように)実のならない木には、(荒々しい)神がつくと言いますよ。実のならない木それぞれに。
大伴安麻呂(おおとものやすまろ)が巨勢郎女(こせのいらつめ)に言い寄った時に、「そんなにつれない態度をすると、(荒々しい)神がつきますよ。」と詠んだ歌です。
「玉葛(たまかづら)」は葛(かずら:つる性の植物)の美称で、「実」を導く枕詞(まくらことば)として使われています。真葛(さなかづら)、ツルアジサイ(ゴトウヅル)ではないかとの説があります(いずれも実際には実をつけます)。
「ちはやぶる」は「神」を導く枕詞(まくらことば)です。
- rough meaning: It is said that a tree that bears no fruit will be intervened by a wild god. To each barren tree and to the tree you.(Please marry me before we grow old together.)
補足
この歌の題詞には、「大伴宿祢(おおとものすくね)、巨勢郎女(こせのいらつめ)を娉(つまど)ふ時の歌一首 [大伴宿祢(おおとものすくね)、諱(いみな)を安麻呂(やすまろ)と曰(い)う。難波朝(なにわのみかど)の右大臣(うだいじん)大紫(だいし)大伴長徳卿(おおとものながとこまえつきみ)の第六子、平城朝(ならのみやこ)大納言兼大将軍(だいなごんけんだいしょうぐん)に任じられて薨(こう)ず。]」とあります。