原文
八隅知之 和期大王之 恐也 御陵奉仕流 山科乃 鏡山尓 夜者毛 夜之盡 晝者母 日之盡 哭耳<呼> 泣乍在而哉 百礒城乃 大宮人者 去別南
作者
よみ
やすみしし 我(わ)ご大君の 畏(かしこ)きや 御陵(みはか)仕(つか)ふる 山科(やましな)の 鏡(かがみ)の山に 夜はも 夜のことごと 昼はも 日のことごと 哭(ね)のみを 泣きつつありてや ももしきの 大宮人(おほみやひと)は 行き別れなむ
意味
わが大君(天智天皇のこと)の畏れ多い御陵に仕えている山科(やましな)の鏡(かがみ)の山に、夜は夜を通して、昼は一日中、声をあげて泣いていて、大宮人は行き別れていくのでしょうか。
「やすみしし」は「我ご大君」を導く枕詞(まくらことば)です。
補足
この歌の題詞には、「山科(やましな)の御陵(みはか)より退散の時、額田王の作る歌一首」とあります。