原文
三諸之 神之神須疑 已具耳矣自得見監乍共 不寝夜叙多
作者
よみ
三諸(みもろ)の 神の神杉(かむすぎ) 已具耳矣自得見監乍共 寝(い)ねぬ夜ぞ多き
意味
三輪山の神の杉、已具耳矣自得見監乍共、眠れない夜が多いのです。
・高市皇子(たけちのみこ)の異母姉にあたる十市皇女(とをちのひめみこ)が亡くなったのを悲しんだ歌です。
- rough meaning: Kami-Sugi of the god of Miwa, UNKNOWN(various theories), there are many nights when I can't sleep.(This poem expresses the saddeness to the sudden death of Princess Tochi who is the half-sister of Prince Takechi.)
補足
・この歌の題詞には、「十市皇女(とをちのひめみこ)の薨(こう)ぜし時、高市皇子尊(たけちのみこのみこと)の作らす歌三首」とあります。
・「已具耳矣自得見監乍共」については、昔から色々な読み方が提案されていて、いまだにはっきりとしていません。次に、色々な説をリストしておきます。これらは、「波流能由伎(はるのゆき)」さまから提供いただきました。
■岩波書店の「校本万葉集」には、以下のような訓が紹介されています。({}で囲んだのは誤字説です。)
- 契沖『万葉代匠記』 已具耳矣自得 見監乍共
いくにをしと みけむつつとも(逝くに惜しと 見けむつつとも) - 荷田春満『万葉集童蒙抄』 已{冥}耳矣 自得見監乍共
いめにのみ みえけんながらも - 賀茂真淵『萬葉考』 已{免乃美}耳 {将}見{管本無}
いめのみに みえつつもとな - 橘守部『万葉集檜嬬手』 已具耳{之}自 影見{盈}乍
すぎしより かげにみえつつ - 鹿持雅澄『万葉集古義』 {如是}耳{荷} {有}得之監乍 {宿}不寝夜叙多
かくのみに ありとしみつつ いねぬよぞおほき - 木村正辞『万葉集美夫君志』 已{目}耳矣自 {将}見監為共
いめにをし みむとすれども
・そのほかの説もご紹介します。
- 井上通泰『万葉集新考』 已{賣}耳{多耳} {将}見{念}共
いめにだに みむともへども - 折口信夫『口訳万葉集』
すぐるをしみ かげにみえつつ - 岩波大系本 已{目}耳{谷} {将}見監為共
いめにだに みむとすれども - 中西進『万葉集 全訳注原文付』
夢のみに 見えつつ共に - 土屋文明「萬葉集私注」
いめ(夢)にのみみえつつ共に い寝ぬ夜ぞ多き - 澤潟久孝「萬葉集注釈」
よそのみ見つつ い寝ぬ夜ぞ多き