万葉の頃の人たちには、好きな人などのことを強く思っていれば姿が見えてくる、思いあっていれば姿が見られるはず・・・という感覚があったようです。「面影」がでてくる歌は14首ありますが、次のように大伴家持にかかわりのある人たちの歌が多いことに興味を引かれますね。
0396: 陸奥の真野の草原遠けども面影にして見ゆといふものを
0602: 夕されば物思ひまさる見し人の言とふ姿面影にして
0752: かくばかり面影にのみ思ほえばいかにかもせむ人目繁くて
0754: 夜のほどろ我が出でて来れば我妹子が思へりしくし面影に見ゆ
1296: 今作る斑の衣面影に我れに思ほゆいまだ着ねども
1630: 高円の野辺のかほ花面影に見えつつ妹は忘れかねつも
1794: たち変り月重なりて逢はねどもさね忘らえず面影にして
2607: 敷栲の衣手離れて我を待つとあるらむ子らは面影に見ゆ
2634: 里遠み恋わびにけりまそ鏡面影去らず夢に見えこそ
2642: 燈火の影にかがよふうつせみの妹が笑まひし面影に見ゆ
2900: 我妹子が笑まひ眉引き面影にかかりてもとな思ほゆるかも
3137: 遠くあれば姿は見えず常のごと妹が笑まひは面影にして
3138: 年も経ず帰り来なむと朝影に待つらむ妹し面影に見ゆ
4220: 海神の神の命のみ櫛笥に貯ひ置きて.......(長歌)