韓亭(からとまり)
現在の福岡市西区宮浦唐泊とされています。写真(池田様ご提供)は現在の唐泊港です。対岸に能古島を望むことができます。唐泊港はかつては、遣新羅使、遣隋使や遣唐使など対外航路の要港として使用されました。
韓亭(からとまり)を詠んだ歌
直接「韓亭(からとまり)」と詠まれている歌は1首だけですが、遣新羅使(けんしらぎし)の歌が載せられている15巻の3668~3673番歌の題詞に韓亭(からとまり)で詠まれた歌だと書かれています。
筑前國(つくしのみちのくち)志麻郡(しまのこほり)の韓亭(からとまり)に到り、舶(ふな)泊まりして三日を經(へ)ぬ。この時、夜の月の光は皎々(こうこう)と流照(りゅうせい)す(白く輝きながら流れる)。奄(たちまち)にこの華(はな)に對(たい)して旅情(りょじょう)が悽噎(せいいつ:切なく思うこと)す。各(おのおの)心緒(おもひ)を陳(の)べ、聊(いささか:ともかくも)に裁(つく)る歌六首
3668: 大君の遠の朝廷と思へれど日長くしあれば恋ひにけるかも
3669: 旅にあれど夜は火灯し居る我れを闇にや妹が恋ひつつあるらむ
3670: 韓亭能許の浦波立たぬ日はあれども家に恋ひぬ日はなし
3671: ぬばたまの夜渡る月にあらませば家なる妹に逢ひて来ましを
3672: ひさかたの月は照りたり暇なく海人の漁りは灯し合へり見ゆ
3673: 風吹けば沖つ白波畏みと能許の亭にあまた夜ぞ寝る