磯(いそ)
磯(いそ)は、海、湖や川の波打ち際の岩などのある場所をいいます。万葉集歌では、磯、荒磯(ありそ)、磯廻(いそみ)などと詠まれています。
0131: 石見の海角の浦廻を浦なしと人こそ見らめ.......(長歌)
0135: つのさはふ石見の海の言さへく唐の崎なる.......(長歌)
0138: 石見の海津の浦をなみ浦なしと人こそ見らめ.......(長歌)
0155: やすみしし我ご大君の畏きや御陵仕ふる山科の.......(長歌)
0166: 磯の上に生ふる馬酔木を手折らめど見すべき君が在りと言はなくに
0181: み立たしの島の荒礒を今見れば生ひざりし草生ひにけるかも
0185: 水伝ふ礒の浦廻の岩つつじ茂く咲く道をまたも見むかも
0220: 玉藻よし讃岐の国は国からか見れども飽かぬ.......(長歌)
0222: 沖つ波来寄る荒礒を敷栲の枕とまきて寝せる君かも
0273: 磯の崎漕ぎ廻み行けば近江の海八十の港に鶴さはに鳴く
0314: さざれ波礒越道なる能登瀬川音のさやけさたぎつ瀬ごとに
0359: 阿倍の島鵜の住む磯に寄する波間なくこのころ大和し思ほゆ
0362: みさご居る磯廻に生ふるなのりその名は告らしてよ親は知るとも
0363: みさご居る荒磯に生ふるなのりそのよし名は告らせ親は知るとも
0368: 大船に真楫しじ貫き大君の命畏み磯廻するかも
0388: 海神はくすしきものか淡路島中に立て置きて.......(長歌)
0435: みつみつし久米の若子がい触れけむ礒の草根の枯れまく惜しも
0447: 鞆の浦の礒のむろの木見むごとに相見し妹は忘らえめやも
0448: 礒の上に根延ふむろの木見し人をいづらと問はば語り告げむか
0509: 臣の女の櫛笥に乗れる鏡なす御津の浜辺に.......(長歌)
0568: み崎廻の荒磯に寄する五百重波立ちても居ても我が思へる君
0600: 伊勢の海の礒もとどろに寄する波畏き人に恋ひわたるかも
0918: 沖つ島荒礒の玉藻潮干満ちい隠りゆかば思ほえむかも
1020: 大君の命畏みさし並ぶ国に出でますはしきやし.......(長歌)
1021: 大君の命畏みさし並ぶ国に出でますはしきやし.......(長歌)
1117: 島廻すと磯に見し花風吹きて波は寄すとも採らずはやまじ
1155: 名児の海の朝明のなごり今日もかも磯の浦廻に乱れてあるらむ
1164: 潮干ればともに潟に出で鳴く鶴の声遠ざかる磯廻すらしも
1167: あさりすと礒に我が見しなのりそをいづれの島の海人か刈りけむ
1180: 荒磯越す波を畏み淡路島見ずか過ぎなむここだ近きを
1187: 網引する海人とか見らむ飽の浦の清き荒磯を見に来し我れを
1198: あさりすと礒に棲む鶴明けされば浜風寒み己妻呼ぶも
1201: 大海の水底響み立つ波の寄らむと思へる礒のさやけさ
1202: 荒礒ゆもまして思へや玉の浦離れ小島の夢にし見ゆる
1203: 礒の上に爪木折り焚き汝がためと我が潜き来し沖つ白玉
1204: 浜清み礒に我が居れば見む人は海人とか見らむ釣りもせなくに
1226: 三輪の崎荒磯も見えず波立ちぬいづくゆ行かむ避き道はなしに
1227: 礒に立ち沖辺を見れば藻刈り舟海人漕ぎ出らし鴨翔る見ゆ
1234: 潮早み磯廻に居れば潜きする海人とや見らむ旅行く我れを
1236: 夢のみに継ぎて見えつつ高島の礒越す波のしくしく思ほゆ
1239: 大海の礒もと揺り立つ波の寄せむと思へる浜の清けく
1300: をちこちの礒の中なる白玉を人に知らえず見むよしもがも
1301: 海神の手に巻き持てる玉故に礒の浦廻に潜きするかも
1389: 礒の浦に来寄る白波返りつつ過ぎかてなくは誰れにたゆたへ
1394: 潮満てば入りぬる礒の草なれや見らく少く恋ふらくの多き
1395: 沖つ波寄する荒礒のなのりそは心のうちに障みとなれり
1396: 紫の名高の浦のなのりその礒に靡かむ時待つ我れを
1397: 荒礒越す波は畏ししかすがに海の玉藻の憎くはあらずて
1671: 由良の崎潮干にけらし白神の礒の浦廻をあへて漕ぐなり
1729: 暁の夢に見えつつ梶島の礒越す波のしきてし思ほゆ
1735: 我が畳三重の川原の礒の裏にかくしもがもと鳴くかはづかも
1796: 黄葉の過ぎにし子らと携はり遊びし礒を見れば悲しも
1797: 潮気立つ荒礒にはあれど行く水の過ぎにし妹が形見とぞ来し
1799: 玉津島礒の浦廻の真砂にもにほひて行かな妹も触れけむ
2004: 己夫にともしき子らは泊てむ津の荒礒巻きて寝む君待ちかてに
2434: 荒礒越し外行く波の外心我れは思はじ恋ひて死ぬとも
2488: 礒の上に立てるむろの木ねもころに何しか深め思ひそめけむ
2733: 白波の来寄する島の荒礒にもあらましものを恋ひつつあらずは
2739: みさご居る沖つ荒礒に寄する波ゆくへも知らず我が恋ふらくは
2751: あぢの住む渚沙の入江の荒礒松我を待つ子らはただ独りのみ
2801: 大海の荒礒の洲鳥朝な朝な見まく欲しきを見えぬ君かも
2861: 礒の上に生ふる小松の名を惜しみ人に知らえず恋ひわたるかも
3072: 大崎の荒礒の渡り延ふ葛のゆくへもなくや恋ひわたりなむ
3077: みさご居る荒礒に生ふるなのりそのよし名は告らじ親は知るとも
3163: 我妹子に触るとはなしに荒礒廻に我が衣手は濡れにけるかも
3164: 室の浦の瀬戸の崎なる鳴島の磯越す波に濡れにけるかも
3177: 志賀の海人の礒に刈り干すなのりその名は告りてしを何か逢ひかたき
3199: 海の底沖は畏し礒廻より漕ぎ廻みいませ月は経ぬとも
3206: 筑紫道の荒礒の玉藻刈るとかも君が久しく待てど来まさぬ
3225: 天雲の影さへ見ゆるこもりくの泊瀬の川は浦なみか.......(長歌)
3226: さざれ波浮きて流るる泊瀬川寄るべき礒のなきが寂しさ
3232: 斧取りて丹生の桧山の木伐り来て筏に作り.......(長歌)
3243: 娘子らが麻笥に垂れたる続麻なす長門の浦に.......(長歌)
3244: 阿胡の海の荒礒の上のさざれ波我が恋ふらくはやむ時もなし
3253: 葦原の瑞穂の国は神ながら言挙げせぬ国.......(長歌)
3341: 家人の待つらむものをつれもなき荒礒を巻きて寝せる君かも
3562: 荒礒やに生ふる玉藻のうち靡きひとりや寝らむ我を待ちかねて
3563: 比多潟の礒のわかめの立ち乱え我をか待つなも昨夜も今夜も
3599: 月読の光りを清み神島の礒廻の浦ゆ船出す我れは
3600: 離れ礒に立てるむろの木うたがたも久しき時を過ぎにけるかも
3619: 礒の間ゆたぎつ山川絶えずあらばまたも相見む秋かたまけて
3627: 朝されば 妹が手にまく鏡なす御津の浜びに.......(長歌)
3892: 礒ごとに海人の釣舟泊てにけり我が船泊てむ礒の知らなく
3954: 馬並めていざ打ち行かな渋谿の清き礒廻に寄する波見に
3959: かからむとかねて知りせば越の海の荒礒の波も見せましものを
3961: 白波の寄する礒廻を漕ぐ舟の楫取る間なく思ほえし君
3985: 射水川い行き廻れる玉櫛笥二上山は春花の.......(長歌)
3986: 渋谿の崎の荒礒に寄する波いやしくしくにいにしへ思ほゆ
3991: もののふの八十伴の男の思ふどち心遣らむと.......(長歌)
3993: 藤波は咲きて散りにき卯の花は今ぞ盛りと.......(長歌)
4049: おろかにぞ我れは思ひし乎布の浦の荒礒の廻り見れど飽かずけり
4159: 礒の上のつままを見れば根を延へて年深からし神さびにけり
4245: そらみつ大和の国あをによし奈良の都ゆおしてる.......(長歌)
4324: 遠江志留波の礒と尓閇の浦と合ひてしあらば言も通はむ
4328: 大君の命畏み磯に触り海原渡る父母を置きて
4338: 畳薦牟良自が礒の離磯の母を離れて行くが悲しさ
4498: はしきよし今日の主人は礒松の常にいまさね今も見るごと
4502: 梅の花咲き散る春の長き日を見れども飽かぬ礒にもあるかも
4503: 君が家の池の白波礒に寄せしばしば見とも飽かむ君かも
4505: 礒の裏に常呼び来住む鴛鴦の惜しき我が身は君がまにまに
4513: 礒影の見ゆる池水照るまでに咲ける馬酔木の散らまく惜しも