原文
白雲之 龍田山之 瀧上之 小鞍嶺尓 開乎為流 櫻花者 山高 風之不息者 春雨之 継而零者 最末枝者 落過去祁利 下枝尓 遺有花者 須臾者 落莫乱 草枕 客去君之 及還来
作者
高橋虫麻呂(たかはしのむしまろ)歌集より
よみ
白雲(しらくも)の、龍田(たつた)の山の、瀧(たき)の上(うへ)の、小椋(をぐら)の嶺(みね)に、咲きををる、桜の花は、山(やま)高(たか)み、風しやまねば、春雨(はるさめ)の、継(つ)ぎてし降(ふ)れば、ほつ枝(え)は 散り過ぎにけり、下枝(しづえ)に、残れる花は、しましくは、散りな乱(まが)ひそ、草枕(くさまくら)、旅行く君が、帰り来るまで
意味
白雲の龍田の山の滝の上の小椋の嶺に咲き乱れている桜の花は、山が高くて風がやまず、春雨が降り続いているので、上のほうの枝はすでに散ってしまいました。下のほうの枝に残った花は、しばらくは散り乱れないで欲しい、草枕の旅に出かけられるあなた様がお帰りになるまで。
- rough meaning: The cherry blossoms that bloom in the hills of Ogura above the waterfall in the mountain of Tatsuta in white cloud are high in the mountains, the wind does not stop, and the spring rain continues to fall, so the upper branch has already fallen. I wish the flowers remaining on the lower branch not to be scattered for a while, until you return from a grass pillow journey.
補足
この歌の題詞には、「春(はる)三月、諸(もろもろ)の卿大夫等(まえつきみたち)の難波(なにわ)に下る時の歌二首[并(あわ)せて短歌]」とあります。