原文
烏玉之 黒髪所沾而 沫雪之 零也来座 幾許戀者
作者
娘子(おとめ)
よみ
ぬばたまの 黒髪濡れて 沫雪(あわゆき)の 降るにや来ます ここだ恋(こ)ふれば
意味
(あなたの)黒髪が濡れています。淡雪が降るのに戻って来てくださったのですね、私がこんなにもあなたのことを恋い慕っていたので。
・「ぬばたまの」は「黒髪」などを導く枕詞(まくらことば)です。
- rough meaning: Your black hair is wet. I'm really glad you have came back to me in spite of light snow since I was so long awaiting you.
補足
この歌の題詞には、「娘子(おとめ)、臥(ふ)しつつ夫君(つま)の歌を聞き、枕より頭を上げ声に応えて和(こた)ふる歌一首」とあります。「夫君(つま)の歌」は、この歌の直前の3804番歌です。このとき、娘子(おとめ)は病の床に伏していました。
また、この歌の左注には、「今、案(かんが)ふるに この歌、其の夫(つま)使われて既に累載(るいさい:何年もたつこと)を經(へ)ぬ。而(しか)して還(かえ)る時に當(あ)たりて雪(ゆき)落る冬(ふゆ)なり。 これによりて娘子(おとめ)、この沫雪(あわゆき)の句を作るか。」とあります。