ぬばたまの Nubatama-no
「黒」や「夜」、またその他の「黒」をイメージさせる言葉を導きます。「ぬばたま」はヒオウギの黒い実のことです。
- Nubatama-no leads the words that imitate "black", "night" and reminder of other black stuff. "Nubatama" is the black fruit of Hiogi(Blackberry lily).
「ぬばたまの」を詠んだ歌
万葉集では、枕詞として使われていて、「ぬばたま」そのものを詠んだ歌はないようです。(ただし、柿本人麿歌集からの歌で、「ぬばたま」として解釈されている歌があります。)
0089: 居明かして君をば待たむぬばたまの我が黒髪に霜は降るとも
0169: あかねさす日は照らせれどぬばたまの夜渡る月の隠らく惜しも
0194: 飛ぶ鳥の明日香の川の上つ瀬に.......(長歌)
0199: かけまくもゆゆしきかも言はまくも.......(長歌)
0302: 子らが家道やや間遠きをぬばたまの夜渡る月に競ひあへむかも
0392: ぬばたまのその夜の梅をた忘れて折らず来にけり思ひしものを
0525: 佐保川の小石踏み渡りぬばたまの黒馬来る夜は年にもあらぬか
0573: ぬばたまの黒髪変り白けても痛き恋には逢ふ時ありけり
0619: おしてる難波の菅のねもころに君が聞こして.......(長歌)
0639: 我が背子がかく恋ふれこそぬばたまの夢に見えつつ寐ねらえずけれ
0702: ぬばたまのその夜の月夜今日までに我れは忘れず間なくし思へば
0723: 常世にと我が行かなくに小金門にもの悲しらに.......(長歌)
0781: ぬばたまの昨夜は帰しつ今夜さへ我れを帰すな道の長手を
0807: うつつには逢ふよしもなしぬばたまの夜の夢にを継ぎて見えこそ
0925: ぬばたまの夜の更けゆけば久木生ふる清き川原に千鳥しば鳴く
0982: ぬばたまの夜霧の立ちておほほしく照れる月夜の見れば悲しさ
1077: ぬばたまの夜渡る月を留めむに西の山辺に関もあらぬかも
1081: ぬばたまの夜渡る月をおもしろみ我が居る袖に露ぞ置きにける
1101: ぬばたまの夜さり来れば巻向の川音高しもあらしかも疾き
1116: ぬばたまの我が黒髪に降りなづむ天の露霜取れば消につつ
1241: ぬばたまの黒髪山を朝越えて山下露に濡れにけるかも
1646: ぬばたまの今夜の雪にいざ濡れな明けむ朝に消なば惜しけむ
1706: ぬばたまの夜霧は立ちぬ衣手を高屋の上にたなびくまでに
1712: 天の原雲なき宵にぬばたまの夜渡る月の入らまく惜しも
1798: いにしへに妹と我が見しぬばたまの黒牛潟を見れば寂しも
1800: 小垣内の麻を引き干し妹なねが作り着せけむ.......(長歌)
2008: ぬばたまの夜霧に隠り遠くとも妹が伝へは早く告げこそ
2035: 年にありて今か巻くらむぬばたまの夜霧隠れる遠妻の手を
2076: 天の川瀬を早みかもぬばたまの夜は更けにつつ逢はぬ彦星
2139: ぬばたまの夜渡る雁はおほほしく幾夜を経てかおのが名を告る
2389: ぬばたまのこの夜な明けそ赤らひく朝行く君を待たば苦しも
2456: ぬばたまの黒髪山の山菅に小雨降りしきしくしく思ほゆ
2532: おほならば誰が見むとかもぬばたまの我が黒髪を靡けて居らむ
2564: ぬばたまの妹が黒髪今夜もか我がなき床に靡けて寝らむ
2569: 思ふらむその人なれやぬばたまの夜ごとに君が夢にし見ゆる
2589: 相思はず君はあるらしぬばたまの夢にも見えずうけひて寝れど
2610: ぬばたまの我が黒髪を引きぬらし乱れてさらに恋ひわたるかも
2631: ぬばたまの黒髪敷きて長き夜を手枕の上に妹待つらむか
2673: ぬばたまの夜渡る月のゆつりなばさらにや妹に我が恋ひ居らむ
2849: ぬばたまのその夢にだに見え継ぐや袖干る日なく我れは恋ふるを
2878: ぬばたまの寐ねてし宵の物思ひに裂けにし胸はやむ時もなし
2890: ぬばたまの夜を長みかも我が背子が夢に夢にし見えかへるらむ
2931: 思ひつつ居れば苦しもぬばたまの夜に至らば我れこそ行かめ
2956: あらたまの年月かねてぬばたまの夢に見えけり君が姿は
2962: 白栲の袖離れて寝るぬばたまの今夜は早も明けば明けなむ
3007: ぬばたまの夜渡る月のさやけくはよく見てましを君が姿を
3108: うつせみの人目繁くはぬばたまの夜の夢にを継ぎて見えこそ
3269: 帰りにし人を思ふとぬばたまのその夜は我れも寐も寝かねてき
3270: さし焼かむ小屋の醜屋にかき棄てむ.......(長歌)
3274: 為むすべのたづきを知らに岩が根の.......(長歌)
3280: 我が背子は待てど来まさず天の原.......(長歌)
3281: 我が背子は待てど来まさず雁が音も.......(長歌)
3297: 玉たすき懸けぬ時なく我が思ふ.......(長歌)
3303: 里人の我れに告ぐらく汝が恋ふる.......(長歌)
3312: 隠口の泊瀬小国によばひせす我が天皇よ.......(長歌)
3313: 川の瀬の石踏み渡りぬばたまの黒馬来る夜は常にあらぬかも
3329: 白雲のたなびく国の青雲の向伏す国の .......(長歌)
3598: ぬばたまの夜は明けぬらし玉の浦にあさりする鶴鳴き渡るなり
3647: 我妹子がいかに思へかぬばたまの一夜もおちず夢にし見ゆる
3651: ぬばたまの夜渡る月は早も出でぬかも海原の八十島の上ゆ妹があたり見む
3671: ぬばたまの夜渡る月にあらませば家なる妹に逢ひて来ましを
3712: ぬばたまの妹が干すべくあらなくに我が衣手を濡れていかにせむ
3721: ぬばたまの夜明かしも船は漕ぎ行かな御津の浜松待ち恋ひぬらむ
3732: あかねさす昼は物思ひぬばたまの夜はすがらに音のみし泣かゆ
3738: 思ひつつ寝ればかもとなぬばたまの一夜もおちず夢にし見ゆる
3769: ぬばたまの夜見し君を明くる朝逢はずまにして今ぞ悔しき
3805: ぬばたまの黒髪濡れて沫雪の降るにや来ますここだ恋ふれば
3844: ぬばたまの斐太の大黒見るごとに巨勢の小黒し思ほゆるかも
3938: かくのみや我が恋ひ居らむぬばたまの夜の紐だに解き放けずして
3955: ぬばたまの夜は更けぬらし玉櫛笥二上山に月かたぶきぬ
3962: 大君の任けのまにまに大夫の心振り起し.......(長歌)
3980: ぬばたまの夢にはもとな相見れど直にあらねば恋ひやまずけり
3988: ぬばたまの月に向ひて霍公鳥鳴く音遥けし里遠みかも
4072: ぬばたまの夜渡る月を幾夜経と数みつつ妹は我れ待つらむぞ
4101: 珠洲の海人の沖つ御神にい渡りて.......(長歌)
4160: 天地の遠き初めよ世間は常なきものと.......(長歌)
4166: 時ごとにいやめづらしく八千種に草木花咲き.......(長歌)
4331: 大君の遠の朝廷としらぬひ筑紫の国は.......(長歌)
4455: あかねさす昼は田賜びてぬばたまの夜のいとまに摘める芹これ
4489: うち靡く春を近みかぬばたまの今夜の月夜霞みたるらむ