原文
宇豆都仁波 安布余志勿奈子 奴婆多麻能 用流能伊昧仁越 都伎提美延許曽
作者
よみ
うつつには、逢(あ)ふよしもなし、ぬばたまの、夜の夢(いめ)にを、継(つ)ぎて見えこそ
意味
実際には逢うことができません。夜の夢(ゆめ)にいつも見えてください。
ぬばたまのは、夜を導く枕詞(まくらことば)です。
補足
この歌を含む0806番歌の題詞には「ありがたくいただいた書を拝見し、具(つぶさ)に芳旨(ほうし:お気持ち)を承りました。忽(たちまち)に、漢(あまのがわ)を隔てた戀(こい)のように思い、復(また)、梁(はし)を抱く意(こころ)を傷(いた)み((橋で恋人を待って死んだ女性の故事をあらわしています))、唯(ただ)羨(ねが)わくは去留(きょりゅう)恙(つつが)無く((互いに離れていても無事で))、遂(つい)に披雲(ひうん:逢うこと)を待つことを願うばかりです。歌詞二首 [大宰帥大伴卿(だざいのそちおおともきょう:大伴旅人(おおとものたびと))]」とあります。