夢(ゆめ) Yume(Dream)
せめて夢の中だけでもお会いしたい・・・万葉の人々は、自分が相手のことを想っていると、相手の夢に出ることができると信じていました。夢にかかわる歌は、相聞(そうもん)がほとんどですが、挽歌(ばんか)にも、亡くなった方が夢にでてくるという歌があります。
ここでは、男女の別なく夢に関わる歌を抜粋して掲載しています。それにしても、「夢」の歌、意外に多いですね。
- "I want to meet you, at least in my dreams..." The Manyo people believed that if they were thinking about someone, he/she could appear in their dreams. Most of the poems related to dreams are Somon poems, but there are also banka poems in which the deceased appear in dreams.
夢(ゆめ)を詠んだ歌 Poems on dreams
0150: うつせみし神に堪へねば離れ居て朝嘆く君.......(長歌)
0175: 夢にだに見ずありしものをおほほしく宮出もするかさ桧の隈廻を
0490: 真野の浦の淀の継橋心ゆも思へや妹が夢にし見ゆる
0581: 生きてあらば見まくも知らず何しかも死なむよ妹と夢に見えつる
0784: うつつにはさらにもえ言はず夢にだに妹が手本を卷き寝とし見ば
2412: 我妹子に恋ひすべながり夢に見むと我れは思へど寐ねらえなくに
0591: 我が思ひを人に知るれか玉櫛笥開きあけつと夢にし見ゆる
0604: 剣大刀身に取り添ふと夢に見つ何のさがぞも君に逢はむため
0615: 我が背子は相思はずとも敷栲の君が枕は夢に見えこそ
0621: 間なく恋ふれにかあらむ草枕旅なる君が夢にし見ゆる
0633: ここだくも思ひけめかも敷栲の枕片さる夢に見え来し
0639: 我が背子がかく恋ふれこそぬばたまの夢に見えつつ寐ねらえずけれ
0622: 網児の山五百重隠せる佐堤の崎さで延へし子が夢にし見ゆる
0705: はねかづら今する妹を夢に見て心のうちに恋ひわたるかも
0710: み空行く月の光にただ一目相見し人の夢にし見ゆる
0716: 夜昼とい別き知らず我が恋ふる心はけだし夢に見えきや
0718: 思はぬに妹が笑ひを夢に見て心のうちに燃えつつぞ居る
0724: 朝髪の思ひ乱れてかくばかり汝姉が恋ふれぞ夢に見えける
0741: 夢の逢ひは苦しかりけりおどろきて掻き探れども手にも触れねば
0744: 夕さらば屋戸開け設けて我れ待たむ夢に相見に来むといふ人を
0749: 夢にだに見えばこそあらめかくばかり見えずしあるは恋ひて死ねとか
0767: 都路を遠みか妹がこのころはうけひて寝れど夢に見え来ぬ
0772: 夢にだに見えむと我れはほどけども相し思はねばうべ見えずあらむ
0784: うつつにはさらにもえ言はず夢にだに妹が手本を卷き寝とし見ば
0807: うつつには逢ふよしもなしぬばたまの夜の夢にを継ぎて見えこそ
0809: 直に逢はずあらくも多く敷栲の枕去らずて夢にし見えむ
1345: 常ならぬ人国山の秋津野のかきつはたをし夢に見しかも
1620: あらたまの月立つまでに来まさねば夢にし見つつ思ひぞ我がせし
0809: 葦屋の菟原娘子の八年子の.......(長歌)
2241: 秋の夜の霧立ちわたりおほほしく夢にぞ見つる妹が姿を
2342: 夢のごと君を相見て天霧らし降りくる雪の消ぬべく思ほゆ
2412: 我妹子に恋ひすべながり夢に見むと我れは思へど寐ねらえなくに
2418: いかならむ名負ふ神に手向けせば我が思ふ妹を夢にだに見む
2479: さね葛後も逢はむと夢のみにうけひわたりて年は経につつ
2501: 里遠み恋ひうらぶれぬまそ鏡床の辺去らず夢に見えこそ
2544: うつつには逢ふよしもなし夢にだに間なく見え君恋ひに死ぬべし
2553: 夢のみに見てすらここだ恋ふる我はうつつに見てばましていかにあらむ
2569: 思ふらむその人なれやぬばたまの夜ごとに君が夢にし見ゆる
2587: 大原の古りにし里に妹を置きて我れ寐ねかねつ夢に見えこそ
2589: 相思はず君はあるらしぬばたまの夢にも見えずうけひて寝れど
2595: 夢にだに何かも見えぬ見ゆれども我れかも惑ふ恋の繁きに
2601: うつつにも夢にも我れは思はずき古りたる君にここに逢はむとは
2621: 摺り衣着りと夢に見つうつつにはいづれの人の言か繁けむ
2634: 里遠み恋わびにけりまそ鏡面影去らず夢に見えこそ
2754: 朝柏潤八川辺の小竹の芽の偲ひて寝れば夢に見えけり
2786: 山吹のにほへる妹がはねず色の赤裳の姿夢に見えつつ
2812: 我妹子に恋ひてすべなみ白栲の袖返ししは夢に見えきや
2813: 我が背子が袖返す夜の夢ならしまことも君に逢ひたるごとし
2814: 我が恋は慰めかねつま日長く夢に見えずて年の経ぬれば
2815: ま日長く夢にも見えず絶えぬとも我が片恋はやむ時もあらじ
2842: 我が心ともしみ思ふ新夜の一夜もおちず夢に見えこそ
2848: 直に会はずあるはうべなり夢にだに何しか人の言の繁けむ
2849: ぬばたまのその夢にだに見え継ぐや袖干る日なく我れは恋ふるを
2850: うつつには直には逢はず夢にだに逢ふと見えこそ我が恋ふらくに
2874: 確かなる使をなみと心をぞ使に遣りし夢に見えきや
2880: うつつにも今も見てしか夢のみに手本まき寝と見るは苦しも
2890: ぬばたまの夜を長みかも我が背子が夢に夢にし見えかへるらむ
2912: 人の見て言とがめせぬ夢に我れ今夜至らむ宿閉すなゆめ
2914: 愛しと思ふ我妹を夢に見て起きて探るになきが寂しさ
2917: うつつにか妹が来ませる夢にかも我れか惑へる恋の繁きに
2937: 白栲の袖折り返し恋ふればか妹が姿の夢にし見ゆる
2995: 夢かと心惑ひぬ月まねく離れにし君が言の通へば
2956: あらたまの年月かねてぬばたまの夢に見えけり君が姿は
2957: 今よりは恋ふとも妹に逢はめやも床の辺去らず夢に見えこそ
2958: 人の見て言とがめせぬ夢にだにやまず見えこそ我が恋やまむ
2959: うつつには言も絶えたり夢にだに継ぎて見えこそ直に逢ふまでに
2995: 逢ふよしの出でくるまでは畳薦隔て編む数夢にし見えむ
3108: うつせみの人目繁くはぬばたまの夜の夢にを継ぎて見えこそ
3111: すべもなき片恋をすとこの頃に我が死ぬべきは夢に見えきや
3112: 夢に見て衣を取り着装ふ間に妹が使ぞ先立ちにける
3117: 門立てて戸も閉したるをいづくゆか妹が入り来て夢に見えつる
3120: 今さらに寝めや我が背子新夜の一夜もおちず夢に見えこそ
3128: 我妹子を夢に見え来と大和道の渡り瀬ごとに手向けぞ我がする
3142: 国遠み直には逢はず夢にだに我れに見えこそ逢はむ日までに
3162: みをつくし心尽して思へかもここにももとな夢にし見ゆる
3227: 葦原の瑞穂の国に手向けすと.......(長歌)
3280: 我が背子は待てど来まさず天の原.......(長歌)
3281: 我が背子は待てど来まさず雁が音も.......(長歌)
3283: 今さらに恋ふとも君に逢はめやも寝る夜をおちず夢に見えこそ
3471: しまらくは寝つつもあらむを夢のみにもとな見えつつ我を音し泣くる
3639: 波の上に浮き寝せし宵あど思へか心悲しく夢に見えつる
3647: 我妹子がいかに思へかぬばたまの一夜もおちず夢にし見ゆる
3714: 秋されば恋しみ妹を夢にだに久しく見むを明けにけるかも
3735: 思はずもまことあり得むやさ寝る夜の夢にも妹が見えざらなくに
3738: 思ひつつ寝ればかもとなぬばたまの一夜もおちず夢にし見ゆる
3929: 旅に去にし君しも継ぎて夢に見ゆ我が片恋の繁ければかも
3978: 妹も我れも心は同じたぐへれどいやなつかしく相見れば.......(長歌)
3980: ぬばたまの夢にはもとな相見れど直にあらねば恋ひやまずけり
3981: あしひきの山きへなりて遠けども心し行けば夢に見えけり
4237: うつつにと思ひてしかも夢のみに手本巻き寝と見ればすべなし
補足 Notes
夢に現れることについて、当時の人たちは次のように考えていたようですね。
- 離れていて逢えない相手が自分を思ってくれていると、夢に現れてくれる
- 恋しい相手のことを強く思うと、恋しい人が夢に現れてくれる
それで、「会えないあの人に、せめて夢で逢いたい。」という気持ちから、いろいろなことをやってみたようですね。それで、本当に夢で逢えたかどうかは・・・・・(^ ^;
- 恋しい相手のことを強く思う
- 12/3162: みをつくし心尽して思へかもここにももとな夢にし見ゆる
- 15/3738: 思ひつつ寝ればかもとなぬばたまの一夜もおちず夢にし見ゆる
- 17/3929: 旅に去にし君しも継ぎて夢に見ゆ我が片恋の繁ければかも
- 袖を返して寝る
- 11/2812: 我妹子に恋ひてすべなみ白栲の袖返ししは夢に見えきや
- 神に祈る
- 11/2418: いかならむ名負ふ神に手向けせば我が思ふ妹を夢にだに見む
- うけひ、をする
- 04/0767: 都路を遠みか妹がこのころはうけひて寝れど夢に見え来ぬ