原文

次嶺經 山背道乎 人都末乃 馬従行尓 己夫之 歩従行者 毎見 哭耳之所泣 曽許思尓 心之痛之 垂乳根乃 母之形見跡 吾持有 真十見鏡尓 蜻領巾 負並持而 馬替吾背

作者

不明

よみ

つぎねふ、山背道(やましろぢ)を、人夫(ひとづま)の、馬より行くに、己夫(おのづま)し、徒歩(かち)より行けば、見るごとに、音(ね)のみし泣かゆ、そこ思ふに、心し痛し、たらちねの、母が形見と、我が持てる、まそみ鏡に、蜻蛉領巾(あきづひれ)、負(お)ひ並(な)め持ちて、馬買へ我が背(せ)

一人静 撮影(2010.07) by きょう

意味

山城の道を、よそのだんな様はで行くのに、私のだんな様は徒歩で行くので、見るたびに声に出して泣いてしまいます。そのことを思うと、心が痛みます。母の形見にと、私が持っている鏡に、とんぼの羽のような薄い布を一緒に背負っていって、を買ってくださいな、あなた。

補足

つぎねふ」は、山背(やましろ)を導く枕詞(まくらことば)です。

更新日: 2010年8月1日(日)