原文
伊波呂尓波 安之布多氣騰母 須美与氣乎 都久之尓伊多里弖 古布志氣毛波母
作者
橘樹郡(たちばなのこほり)の上丁(かみつよほろ/じょうてい) 物部真根(もののべのまね)
橘樹郡(たちばなのこほり)は、武蔵の国の郡で、現在の神奈川県川崎市~横浜市の大部分にあたります。上丁(かみつよほろ/じょうてい)は、防人の一般兵士のことをさします。
よみ
家ろには、葦火(あしふ)焚(た)けども、住みよけを、筑紫(つくし)に至りて、恋(こふ)しけ思はも
意味
家では葦(あし)の火(ひ)を焚いただけでも住みよいのに、筑紫(つくし)に行くと恋しく思うでしょうね。
補足
この歌を含む4425番歌~4432番歌の左注には、「右八首、昔年(さきつとし:昔)の防人の歌です。主典刑部少録(さかんぎょうぶのしょうろく)正七位の上磐余伊美吉諸君(いわれのいみきもろきみ)が抄寫(しょうしゃ:一部を書き写す)して、兵部少輔(ひょうぶしょうしょう)大伴宿祢家持(おおとものすくねやかもち)に贈りました。」、とあります。