原文
隠口乃 泊瀬乃國尓 左結婚丹 吾来者 棚雲利 雪者零来 左雲理 雨者落来 野鳥 雉動 家鳥 可鶏毛鳴 左夜者明 此夜者昶奴 入而且将眠 此戸開為
作者
不明
よみ
隠口(こもりく)の、泊瀬(はつせ)の国に、さよばひに、我(わ)が来(きた)れば、たな曇(ぐも)り、雪(ゆき)は降り来(く)、さ曇(ぐも)り、雨(あめ)は降り来(く)、野(の)つ鳥、雉(きぎし)は響(とよ)む、家(いへ)つ鳥、鶏(かけ)も鳴く、さ夜(よ)は明け この夜は明けぬ、入(い)りてかつ寝(ね)む、この戸開(ひら)かせ
意味
泊瀬(はつせ)の国に妻(つま)問いにわたしが来ると、(空が)かき曇って雪(ゆき)が降って来ます。曇って雨(あめ)が降って来ます。雉(きじ)はけたたましく鳴くし、鶏も鳴きます。夜は明けてしまいました。家の中に入ってとりあえず寝ましょう。この戸を開けてください。
補足
・「隠口(こもりく)の」は泊瀬(はつせ)を導く枕詞(まくらことば)とされています。「こもりく」は、隠れこもる場所といういみです。
・「野(の)つ鳥」は雉(きぎし)を導く枕詞(まくらことば)です。雉(きぎし)は、雉(きじ)の古語です。
・「家つ鳥」は鶏(にわとり)を導く枕詞(まくらことば)です。