原文
明日香能 清御原乃宮尓 天下 所知食之 八隅知之 吾大王 高照 日之皇子 何方尓 所念食可 神風乃 伊勢能國者 奥津藻毛 靡足波尓 塩氣能味 香乎礼流國尓 味凝 文尓乏寸 高照 日之御子
作者
よみ
明日香(あすか)の 清御原(きよみはら)の宮に 天(あめ)の下 知らしめしし やすみしし 我が大君(おほきみ) 高(たか)照らす 日の御子(みこ) いかさまに 思ほしめせか 神風の 伊勢の国は 沖つ藻(も)も 靡(な)みたる波に 潮気(しほけ)のみ 香(かを)れる国に 味(うま)凝(こ)り あやにともしき 高照らす 日の御子
意味
明日香(あすか)の 清御原(きよみはら)の宮で天下を治められた我が大君の日の御子(みこ)、どのようにお思いになってか、伊勢の国の沖の藻(も)も靡く波に、潮の香りがする国にお出でになったまま。無性にお会いしたい、日の御子さま。
・「やすみしし」は「我が大君」を導く枕詞(まくらことば)です。
・写真は飛鳥浄御原宮期の復元遺構です。
補足
この歌の題詞には、「天皇(ここでは天武天皇のこと)崩(かむあが)りましし後の(朱鳥)八年(西暦689年)九月九日、御齋會(ごさいえ:金光明最勝王経を講説する法会)を奉為(つかへまつれ)る夜、夢の裏に習い賜う(夢の中で口ずさんだ)御歌一首 [古歌集(こかしゅう)の中に出ず]」とあります。