原文
大夫之 出立向 故郷之 神名備山尓 明来者 柘之左枝尓 暮去者 小松之若末尓 里人之 聞戀麻田 山彦乃 答響萬田 霍公鳥 都麻戀為良思 左夜中尓鳴
作者
古歌集より
よみ
大夫(ますらを)の 出(い)で立ち向ふ 故郷(ふるさと)の 神(かむ)なび山に 明けくれば 柘(つみ)のさ枝に 夕(ゆふ)されば 小松(こまつ)が末(うれ)に 里人(さとびと)の 聞き恋(こ)ふるまで 山彦(やまびこ)の 相(あひ)響(とよ)むまで 霍公鳥(ほととぎす) 妻恋(つまご)ひすらし さ夜中(よなか)に鳴く
意味
男子が外に出て見る故郷(ふるさと)の神奈備山(かんなびやま)に朝がくると、柘(つみ)の枝に、夕方になると松(まつ)の梢(こずえ)に、里の人が聞いて素敵だと思うほどに、山彦(やまびこ)が響くほど、霍公鳥(ほととぎす)が妻を呼んでいるようです。夜中に鳴いています。
補足
「故郷(ふるさと)の神奈備山(かんなびやま)」がどこなのかはっきりしていませんが、飛鳥(あすか)の雷丘(いかづちのおか)、甘樫丘(あまかしのおか)、もしくはほかの山と考えられています。