松(まつ) Matsu(Pine tree)
マツ科の常緑高木です。代表的なものに、海岸付近に見られるクロマツと山に見られるアカマツがあります。花は4月頃に咲き、松ボックリと呼ばれる実が(翌年の)秋になりますね。
松は昔から、神の憑(よ)り代(しろ)、つまり神様が天から降りてこられる木として考えられてきました。今でも、お正月の門松として残っていますね。
- Pine is a tall evergreen tree of the pine family. Typical examples are black pine found near the coast and red pine found in the mountains. The flowers bloom around April, and the fruit called pinecone is in the fall (int the next year). The pine has long been thought of as the tree of "Yorishiro"(an object that divine spirits are drawn or summoned to), that is, the tree from which God descends from heaven. Even now, the pines are used as "Kadomatsu"(the sign at an entrance to welcome the deity) for the New Year.
松(まつ)を詠んだ歌 Poems including Matsu
松は萩(はぎ)や梅(うめ)についで多く詠まれています。「松」を「待つ」に掛けた歌も数多くありますね。
- Matsu is the third most mentioned plant in poems after Hagi and Ume in Manyoshu. There are many poems that the word "Matsu(Pine)" are used as a pivot word meaning "Wait".
0011: 我が背子は仮廬作らす草なくは小松が下の草を刈らさね
0034: 白波の浜松が枝の手向けぐさ幾代までにか年の経ぬらむ
0063: いざ子ども早く日本へ大伴の御津の浜松待ち恋ひぬらむ
0065: 霰打つ安良礼松原住吉の弟日娘女と見れど飽かぬかも
0066: 大伴の高師の浜の松が根を枕き寝れど家し偲はゆ
0073: 我妹子を早見浜風大和なる我を松椿吹かざるなゆめ
0113: み吉野の玉松が枝ははしきかも君が御言を持ちて通はく
0141: 磐白の浜松が枝を引き結びま幸くあらばまた帰り見む
0143: 磐代の岸の松が枝結びけむ人は帰りてまた見けむかも
0144: 磐代の野中に立てる結び松心も解けずいにしへ思ほゆ
0145: 鳥翔成あり通ひつつ見らめども人こそ知らね松は知るらむ
0146: 後見むと君が結べる磐代の小松がうれをまたも見むかも
0228: 妹が名は千代に流れむ姫島の小松がうれに蘿生すまでに
0257: 天降りつく天の香具山霞立つ春に至れば.......(長歌)
0260: 天降りつく神の香具山うち靡く春さり来れば.......(長歌)
0279: 我妹子に猪名野は見せつ名次山角の松原いつか示さむ
0295: 住吉の岸の松原遠つ神我が大君の幸しところ
0309: 石室戸に立てる松の木汝を見れば昔の人を相見るごとし
0394: 標結ひて我が定めてし住吉の浜の小松は後も我が松
0431: いにしへにありけむ人の倭文幡の.......(長歌)
0444: 昨日こそ君はありしか思はぬに浜松の上に雲にたなびく
0588: 白鳥の飛羽山松の待ちつつぞ我が恋ひわたるこの月ごろを
0593: 君に恋ひいたもすべなみ奈良山の小松が下に立ち嘆くかも
0623: 松の葉に月はゆつりぬ黄葉の過ぐれや君が逢はぬ夜ぞ多き
0895: 大伴の御津の松原かき掃きて我れ立ち待たむ早帰りませ
0952: 韓衣着奈良の里の嶋松に玉をし付けむよき人もがも
0990: 茂岡に神さび立ちて栄えたる千代松の木の年の知らなく
1030: 妹に恋ひ吾の松原見わたせば潮干の潟に鶴鳴き渡る
1041: 我がやどの君松の木に降る雪の行きには行かじ待にし待たむ
1042: 一つ松幾代か経ぬる吹く風の音の清きは年深みかも
1043: たまきはる命は知らず松が枝を結ぶ心は長くとぞ思ふ
1159: 住吉の岸の松が根うちさらし寄せ来る波の音のさやけさ
1185: 朝なぎに真楫漕ぎ出て見つつ来し御津の松原波越しに見ゆ
1458: やどにある桜の花は今もかも松風早み地に散るらむ
1650: 池の辺の松の末葉に降る雪は五百重降りしけ明日さへも見む
1654: 松蔭の浅茅の上の白雪を消たずて置かむことはかもなき
1674: 我が背子が使来むかと出立のこの松原を今日か過ぎなむ
1687: 白鳥の鷺坂山の松蔭に宿りて行かな夜も更けゆくを
1716: 白波の浜松の木の手向けくさ幾代までにか年は経ぬらむ
1783: 松返りしひてあれやは三栗の中上り来ぬ麻呂といふ奴
1795: 妹らがり今木の嶺に茂り立つ嬬松の木は古人見けむ
1922: 梅の花咲きて散りなば我妹子を来むか来じかと我が松の木ぞ
1937: 大夫の出で立ち向ふ故郷の神なび山に.......(長歌)
2198: 風吹けば黄葉散りつつすくなくも吾の松原清くあらなくに
2313: あしひきの山かも高き巻向の崖の小松にみ雪降りくる
2314: 巻向の桧原もいまだ雲居ねば小松が末ゆ沫雪流る
2484: 君来ずは形見にせむと我がふたり植ゑし松の木君を待ち出でむ
2485: 袖振らば見ゆべき限り我れはあれどその松が枝に隠らひにけり
2486: 茅渟の海の浜辺の小松根深めて我れ恋ひわたる人の子ゆゑに
2487: 奈良山の小松が末のうれむぞは我が思ふ妹に逢はずやみなむ
2653: 馬の音のとどともすれば松蔭に出でてぞ見つるけだし君かと
2751: あぢの住む渚沙の入江の荒礒松我を待つ子らはただ独りのみ
2861: 礒の上に生ふる小松の名を惜しみ人に知らえず恋ひわたるかも
3047: 神さびて巌に生ふる松が根の君が心は忘れかねつも
3130: 豊国の企救の浜松ねもころに何しか妹に相言ひそめけむ
3258: あらたまの年は来ゆきて玉梓の使の来ねば.......(長歌)
3324: かけまくもあやに畏し藤原の都しみみに.......(長歌)
3346: 見欲しきは雲居に見ゆるうるはしき鳥羽の松原.......(長歌)
3433: 薪伐る鎌倉山の木垂る木を松と汝が言はば恋ひつつやあらむ
3495: 巌ろの沿ひの若松限りとや君が来まさぬうらもとなくも
3621: 我が命を長門の島の小松原幾代を経てか神さびわたる
3655: 今よりは秋づきぬらしあしひきの山松蔭にひぐらし鳴きぬ
3721: ぬばたまの夜明かしも船は漕ぎ行かな御津の浜松待ち恋ひぬらむ
3747: 我が宿の松の葉見つつ我れ待たむ早帰りませ恋ひ死なぬとに
3890: 我が背子を安我松原よ見わたせば海人娘子ども玉藻刈る見ゆ
3899: 海人娘子漁り焚く火のおぼほしく角の松原思ほゆるかも
3942: 松の花花数にしも我が背子が思へらなくにもとな咲きつつ
4014: 松反りしひにてあれかもさ山田の翁がその日に求めあはずけむ
4169: 霍公鳥来鳴く五月に咲きにほふ花橘の.......(長歌)
4177: 我が背子と手携はりて明けくれば.......(長歌)
4266: あしひきの八つ峰の上の栂の木の.......(長歌)
4271: 松蔭の清き浜辺に玉敷かば君来まさむか清き浜辺に
4375: 松の木の並みたる見れば家人の我れを見送ると立たりしもころ
4439: 松が枝の土に着くまで降る雪を見ずてや妹が隠り居るらむ
4457: 住吉の浜松が根の下延へて我が見る小野の草な刈りそね
4464: 霍公鳥懸けつつ君が松蔭に紐解き放くる月近づきぬ
4498: はしきよし今日の主人は礒松の常にいまさね今も見るごと
4501: 八千種の花は移ろふ常盤なる松のさ枝を我れは結ばな