原文

吾勢■乎 倭邊遺登 佐夜深而 鷄鳴露尓 吾立所霑之

作者

大伯皇女(おおくのひめみこ)

よみ

我が背子(せこ)を、大和へ遣(や)ると、さ夜(よ)更(ふ)けて、暁(あかとき)露(つゆ)に、我れ立ち濡れし

意味

イラスト by ひろさま

私の弟を大和へやってしまうのを見送ろうとしていると、夜も更け、明け方の露(つゆ)に濡れてしまいました。

- rough meaning: I send him off to return my younger brother to Yamato alone. Then it became late at night, and I got wet with dew at dawn.

・朱鳥(あけみとり)元年(西暦686年)9月9日に天武天皇(てんむてんのう)が亡くなった後、謀反(むほん)の疑いをかけられると感じた大津皇子(おおつのみこ)は大和から、姉の大伯皇女(おおくのひめみこ)に会いに来ました。しかし、大伯皇女(おおくのひめみこ)は彼を大和に帰らせるしかなく、弟の運命を感じつつ朝露に濡れ見送ったことでしょう。

・大和に戻った大津皇子(おおつのみこ)は、10月2日に捕らわれ、翌日自害させられました。

補足

この歌の題詞には、「大津皇子(おおつのみこ)竊(ひそ)かに、伊勢神宮に下(くだ)りて、上(のぼ)り来たりし時に、大伯皇女(おおくのひめみこ)の御作歌(みうた)」とあります。

更新日: 2020年08月09日(日)