原文

波流能努尓 紀理多知和多利 布流由岐得 比得能美流麻提 烏梅能波奈知流[筑前目田氏真上]

作者

田氏真上(でんしのまかみ)

よみ

春(はる)の野に、霧(きり)立ちわたり、降る雪(ゆき)と、人の見るまで、梅の花散る[筑前目(ちくぜんのさかん)田氏真上(でんしのまかみ)]

意味

梅 by 写真AC

春(はる)の野に霧(きり)が立ちわたり、雪(ゆき)が降っているのかと人が思うほどに梅の花が散っています。

・天平2年(西暦730年)正月13日に太宰府の帥(そち)大伴旅人(おおとものたびと)の邸宅で宴会をしました。そのときに、参加者が詠んだ梅の歌のひとつです。

・この歌の作者である筑前目田氏真神の詳しいことはわかっていません。筑前目(ちくぜんのさかん)は、筑前(ちくぜん:現在の福岡県北西部)の国司(こくし:国の行政を司る役人)の官職のひとつ、目(もく)であることを示しています。

補足

この歌を含む0815番歌の題詞には、「天平二年正月十三日に太宰府の帥(そち)大伴旅人(おおとものたびと)の邸宅で宴会をしました。天気がよく、風も和らぎ、梅は白く色づき、蘭が香っています。嶺には雲がかかって、松には霞がかかったように見え、山には霧がたちこめ、鳥は霧に迷う。庭には蝶が舞い、空には雁が帰ってゆく。空を屋根にし、地を座敷にしてひざを突き合わせて酒を交わす。楽しさに言葉さえ忘れ、着物をゆるめてくつろぎ、好きなように過ごす。梅を詠んで情のありさまをしるしましょう。」とあります。

更新日: 2019年01月27日(日)