原文

白雲乃 龍田山乃 露霜尓 色附時丹 打超而 客行公者 五百隔山 伊去割見 賊守 筑紫尓至 山乃曽伎 野之衣寸見世常 伴部乎 班遣之 山彦乃 将應極 谷潜乃 狭渡極 國方乎 見之賜而 冬木成 春去行者 飛鳥乃 早御来 龍田道之 岳邊乃路尓 丹管土乃 将薫時能 櫻花 将開時尓 山多頭能 迎参出六 公之来益者

作者

高橋虫麻呂(たかはしのむしまろ)

よみ

白雲の、龍田の山の、露霜(つゆしも)に、色づく時に、うち越えて、旅行く君は、五百重山(いほへやま)、い行きさくみ、敵(あた)守る、筑紫に至り、山のそき、野のそき見よと、伴(とも)の部を、班(あか)ち遣(つか)はし、山彦の、答へむ極(きは)み、たにぐくの、さ渡る極み、国形(くにかた)を、見したまひて、こもり、さりゆかば、飛ぶ鳥の、早く来まさね 、龍田道(たつたぢ)の、岡辺の道に、丹(に)つつじの、にほはむ時の、桜花、咲きなむ時に、山たづの、迎へ参ゐ出む、君が来まさば

意味

 by

白雲の龍田の山が露(つゆ)霜(しも)で色づく頃に、旅行くあなたは、いくつもの山々を越えて進み、敵から守るために筑紫に着き、山の果てや野の果てを見るように、兵隊たちを分けて派遣し、山彦が聞こえる限りまで、ひきがえるが行く限りまで、国の様子をご覧になり、になったら飛ぶ鳥のように早くお帰りください。龍田の道の岡辺の道に真っ赤なつつじが咲き誇り、が咲くときに、お迎えに参ります。あなたがお帰りになったら。

- rough meaning: As the mountains of Tatsuta turn colored with dew and frost, You travel across mountains and reach Chikushi to protect from enemies. You order soldiers to see the ends of the mountains and the ends of the fields. You will guard the whole country as far as you can hear Yamabiko(an echo). And you will come back like a flying bird as soon as spring comes. Red azaleas and cherry blossoms will be in full glory on the Okabe-no-mich in the Tatsuta Road. I will pick you up.

補足

・天平4年(西暦732年)8月17日、藤原宇合(ふじわらのうまかい)が西海道節度使(さいかいどうせつどし)として派遣されたときに高橋虫麻呂(たかはしのむしまろ)が詠んだ歌です。節度使(せつどし)は、地方の軍事などのチェックをするために派遣される人で、この制度はこの歌が詠まれた天平4年からスタートしたようです。

更新日: 2020年03月22日(日)