笠女郎(かさのいらつめ) Kasano-Iratsume
万葉集には、大伴家持(おおとものやかもち)に贈った29首の歌があるのですが、出生などは分かっていません。第4巻には、笠女郎の歌が24首も載っています。
なお、笠女郎(かさのいらつめ)から大伴家持(おおとものやかもち)に贈った歌は29首ですけど、大伴家持(おおとものやかもち)から笠女郎(かさのいらつめ)に贈った歌は、たったの2首です。
- In Manyoshu, there are 29 poems that were presented by Kasano-Iratsume to Otomo-no-Yakamochi, but her birth and other details are unknown. Volume 4 contains 24 poems by Kasano-Iratsume.
- The number of poems sent from Kasano-Iratsume to Otomo-no-Yakamochi was 29, but the number of poems sent from Otomo-no-Yakamochi to Kasano-Iratsume was only two.
笠女郎(かさのいらつめ)が詠んだ歌 Poems written by Kasano-Iratsume
0395: 託馬野に生ふる紫草衣に染めいまだ着ずして色に出でにけり
0396: 陸奥の真野の草原遠けども面影にして見ゆといふものを
0397: 奥山の岩本菅を根深めて結びし心忘れかねつも
0587: 我が形見見つつ偲はせあらたまの年の緒長く我れも偲はむ
0588: 白鳥の飛羽山松の待ちつつぞ我が恋ひわたるこの月ごろを
0589: 衣手を打廻の里にある我れを知らにぞ人は待てど来ずける
0590: あらたまの年の経ぬれば今しはとゆめよ我が背子我が名告らすな
0591: 我が思ひを人に知るれか玉櫛笥開きあけつと夢にし見ゆる
0592: 闇の夜に鳴くなる鶴の外のみに聞きつつかあらむ逢ふとはなしに
0593: 君に恋ひいたもすべなみ奈良山の小松が下に立ち嘆くかも
0594: 我がやどの夕蔭草の白露の消ぬがにもとな思ほゆるかも
0595: 我が命の全けむ限り忘れめやいや日に異には思ひ増すとも
0596: 八百日行く浜の真砂も我が恋にあにまさらじか沖つ島守
0597: うつせみの人目を繁み石橋の間近き君に恋ひわたるかも
0598: 恋にもぞ人は死にする水無瀬川下ゆ我れ痩す月に日に異に
0599: 朝霧のおほに相見し人故に命死ぬべく恋ひわたるかも
0600: 伊勢の海の礒もとどろに寄する波畏き人に恋ひわたるかも
0601: 心ゆも我は思はずき山川も隔たらなくにかく恋ひむとは
0602: 夕されば物思ひまさる見し人の言とふ姿面影にして
0603: 思ふにし死にするものにあらませば千たびぞ我れは死にかへらまし
0604: 剣大刀身に取り添ふと夢に見つ何のさがぞも君に逢はむため
0605: 天地の神の理なくはこそ我が思ふ君に逢はず死にせめ
0606: 我れも思ふ人もな忘れおほなわに浦吹く風のやむ時もなし
0607: 皆人を寝よとの鐘は打つなれど君をし思へば寐ねかてぬかも
0608: 相思はぬ人を思ふは大寺の餓鬼の後方に額つくごとし
0609: 心ゆも我は思はずきまたさらに我が故郷に帰り来むとは
0610: 近くあれば見ねどもあるをいや遠く君がいまさば有りかつましじ
1451: 水鳥の鴨の羽色の春山のおほつかなくも思ほゆるかも