紅(くれない) Kurenai(Deep red, Safflower)
キク科ベニバナ属の紅花(ベニバナ)のこと、また紅花で染めた鮮やかな赤い色を指しています。紅花は6~7月頃にアザミに似た黄色の花(次第に赤くなります)を咲かせます。アジア原産の一年草で、日本には飛鳥時代にやってきたと考えられています。
紅花(ベニバナ)は染色に使われ、朱華(はねず)、紅(くれない)、黄丹(おうに)などの色を作り出していました。
- Kurenai refers to the safflower of the family Asteraceae and the deep red color dyed with safflower. Safflower blooms yellow flowers resembling thistle from June to July. It is an annual herb native to Asia, and is believed to have come to Japan during the Asuka period.
紅(くれない)を詠んだ歌
朱華(はねず)や紅(くれない)に染色された衣服は、灰で洗濯すると色落ちがします。そのことから、「うつろう」、「はかない」の言葉を導くようになったと考えられます。万葉集には、末摘花(すえつむはな)という呼び名でも登場します。
0683: 言ふ言の畏き国ぞ紅の色にな出でそ思ひ死ぬとも
1044: 紅に深く染みにし心かも奈良の都に年の経ぬべき
1218: 黒牛の海紅にほふももしきの大宮人しあさりすらしも
1297: 紅に衣染めまく欲しけども着てにほはばか人の知るべき
1313: 紅の深染めの衣下に着て上に取り着ば言なさむかも
1343: 言痛くはかもかもせむを紅の現し心や妹に逢はずあらむ
1672: 黒牛潟潮干の浦を紅の玉裳裾引き行くは誰が妻
1742: しな照る片足羽川のさ丹塗りの.......(長歌)
1993: 外のみに見つつ恋ひなむ紅の末摘花の色に出でずとも
2177: 春は萌え夏は緑に紅のまだらに見ゆる秋の山かも
2550: 立ちて思ひ居てもぞ思ふ紅の赤裳裾引き去にし姿を
2623: 紅の八しほの衣朝な朝な馴れはすれどもいやめづらしも
2624: 紅の深染めの衣色深く染みにしかばか忘れかねつる
2655: 紅の裾引く道を中に置きて我れは通はむ君か来まさむ
2763: 紅の浅葉の野らに刈る草の束の間も我を忘らすな
2827: 紅の花にしあらば衣手に染め付け持ちて行くべく思ほゆ
2828: 紅の深染めの衣を下に着ば人の見らくににほひ出でむかも
2966: 紅の薄染め衣浅らかに相見し人に恋ふるころかも
3703: 竹敷の宇敝可多山は紅の八しほの色になりにけるかも
3877: 紅に染めてし衣雨降りてにほひはすともうつろはめやも
3969: 大君の任けのまにまにしなざかる.......(長歌)
3973: 大君の命畏みあしひきの山野さはらず.......(長歌)
4109: 紅はうつろふものぞ橡のなれにし来ぬになほしかめやも
4156: あらたまの年行きかはり春されば.......(長歌)
4157: 紅の衣にほはし辟田川絶ゆることなく我れかへり見む
4160: 天地の遠き初めよ世間は常なきものと.......(長歌)
4192: 桃の花紅色ににほひたる面輪のうちに.......(長歌)